日本財団 図書館


これは罹病率圧縮説(Fries、1980)といわれるもので、成人の延命が限界に達しているとすれば、身体障害を招く疾患の発症を先延ばしして、活動的に生活できる時間を延長させることが望ましいと考えられます。つまり、健康で社会的に活動できる時間を長くし、そして身体障害の時間を減らすことが、医療の質を評価することにもなるということです。

 

齢(とし)をとると身体機能はどう変わっていくのでしょうか

 

70歳代の臓器機能の変化を30歳代のそれと比較してみましょう。齢をとると、物忘れがひどくなるとか、ぼけるのではないかと心配されるのですが、決してそんなことはありません。

体の中でいちばん機能の保たれているのが脳です。脳の血流は30歳のときを100とすればその80%も保たれているのですが、それに対して心臓の機能は65%、肺活量は55%、腎機能では45%まで低下し、最も顕著なのが酸素を使う能力、つまり体全体の持久力が40%にも低下するということです。頭よりも体がおとろえるということです。そこで、頭もしっかりしており、なおかつ体もしっかりしているという新しい老人のモデルを世に示すことに大きな意義があるのだと思います。

ライフ・プランニング・センター・クリニク(LPC)で1996年に受診した75歳以上の老人67例(男39例、女28例)の5年にわたる身体的変化の特徴をまとめた成績を見てみましょう。

薬剤を使っている人は54例(85%)、薬物を使っていない人が13例(15%)です。つまり多くの老人は何らかの健康障害をもっていることになります。治療薬では降圧薬が24%で最も多く、高脂血薬が19%、多発性脳梗塞に対する抗血栓薬15%、睡眠障害のための睡眠薬12%、その他抗尿酸薬、点眼薬(白内障)、下剤、鎮痛薬(腰痛など)、抗血糖薬の順になっています。男では前立腺の薬を使っている人が15%ほどおります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION