最近、わが国の一部の地域で、在宅高齢者の尿失禁対策として、患者または介護者による一日5〜6回の間歇導尿を行い、良好な成果が報告されています。おむつ交換に必要な労作と時間を考えると、一定時間ごとの導尿のほうが介護者にとっても楽ですし、お年寄りにとっても、おむつフリーとなり活動制限がなくなります。この方法は長所も多いのですが、一定時間の導尿を行わないと尿路感染を起こし、菌血症を起こす可能性があります。これらのことを理解した上で行うなら、将来、尿失禁対策としてのひとつの柱となる可能性があります。
5] ペニス・クレンメ、尿もれクレンメとはどのようなものですか
男性で痴呆がなく失禁量が多い患者さんには、ペニス・クレンメという失禁器具が発売されています。ペニスを上下方向に挟んで、尿もれを防止する装置です。陰茎の感覚が鈍っている人や痴呆のある人では、陰茎を強く締めすぎたために循環障害を起こし、陰茎が壊死に陥ることもあるので、用いないほうがよいでしょう。
この器具は、尿道の圧迫の程度がむずかしく、手先の不自由になったお年寄りには不適であり、私はこの器具の使用をあまり勧めていません。
女性の尿もれには腟内にシリコン製のバルーンを入れて、空気でバルーンを膨らませて尿道を圧迫し、尿もれを防ぐという方法があります。欧米ではさまざまの型の装置が発売されています。北欧では尿道に栓をして尿もれを防ぐ方法が行われています。しかし、わが国の女性では、尿道や腔内に異物を入れることを好まない女性が多いこと、異物挿入により膀胱炎や腟炎を起こす可能性が高いことなどから、あまり普及していないようです。