初版の序
“尿がもれる”ことと“尿が出にくい”ことは、相反する状態なのですが、高齢者ではこの2つの病態が、同時に出現することがあります。この相反する訴えのある患者さんの治療は難しいことが多く、泌尿器科疾患の治療として解決しなければならない問題の1つとなっています。今回は“尿もれ対策”を中心に述べ、必要な場合にのみ排尿困難などの尿もれに伴う症状の治療に触れたいと思います。
尿もれは死にいたるような重大な病気の症状ではないのですが、尿もれのために、日常生活や社会生活が制限されるときは、治療の必要があります。たとえば、友達との旅行を控えたり、スポーツを止めなければならないような状態の女性がかなり多いと推定されます。尿もれ対策が進んでいるスウェーデンの調査からでさえも、治療を必要とする尿もれのある人の半分以上が、尿もれを「加齢的な自然現象」とか「治療の手段がない」と考えて治療せずに放置していたこと、20〜30%の人で「恥ずかしさのために医師を訪れることができない」とか、「訪れる意思があっても何科を受診すればよいのかがわからない」と答え、放置していたという報告があります。