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このような一連の流れの中で、診療録の形式や意味が問題とされるようになってきました。

このような大きな医療のうねりの中で、1970年、先にも触れましたように、アメリカ・ジョージア州のエモリー大学で、ハースト教授がPOSを医学生の教育に利用したところとても効率的だったというので、この形式の記録は看護記録にも取り入れられるようになり、またたく間に全米に普及していきました。

問題リストの各項目についての医学的イニシャル・プランは医師が立てるにしても、患者をケアするための経過記録はナースによってSOAP(S=Subject、0=Object、A=Assessment、P=Plan)が記載されるようになりました。SOAPではとくにA、すなわちアセスメントの重要性が強調されました。ハースト教授は全米を駆け回ってこのシステムの普及に努力されたのですが、その結果、POSはハリソン教授やセシル教授などの有名な内科教科書にも必ず記載されるようになり、アメリカ全土に定着していきました。

ところが、日本ではPOSの形式を輸入はしたけれども、内容が定着をみないうちに、看護過程、看護診断などの考えがたてつづけにアメリカから導入されました。後ほど詳しく触れますが、POSと看護過程とはきわめて類似したシステムであるにもかかわらず、わずかな違いの看護過程が強調されて日本に紹介されてしまったのです。これはPOMR(Problem-Oriented Medical Record)が医師であったウィードによって提唱されたことへの看護界の抵抗だったのかもしれません。

ところで、ウィードの示した問題解決技法も、ウィードがまったく新規に始めたのではなく、その10年以上前にE・ホネットが『Art of problem solving』という本でこの問題解決法を紹介しています。

 

 

 

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