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ケアというのは、これまでの日本では、“世話”とか“介抱”と呼ばれていたものといえましょう。ケアというのは、看護だけではなく、医師によるケアもあるし、もちろん看護職によるケアもあるし、また介護職によるケアも、家族によるケアもあります。病む人をお世話するということの中には、物で世話をすることもあるし、薬で世話をすること、そしてそれ以外にその人のこころを十分に支えてあげるということもケアの中には含まれていくのです。

私は中学に入って英語を習い始めたときに、まず "Please take good care of yourself"というフレーズを教わりました。「どうぞお大事に」という意味ですが、直訳すれば「あなたがあなた自身のケアをしなさい」ということになります。自分を自分でケアをすること、これもケアです。ですから、ケアというのは、大きな傘の中で、医師がやること、ナースがやること、そして介護者や家族がやること、そして自分でできることは自分でやるということも含めて、それらが一つのシステムとして全部入るのです。

そして一方では看護婦がこれまでやってきたケア以外に、これからは医師の仕事とされてきたようなことまでしなければならない時代がきているのです。どういう意味かといいますと、これからは看護婦であっても診断ができなくては困る、治療ができなくては困るという状況になっているからです。病院で医師と看護婦が一緒に働いている場合はいいのだけれども、在宅ケアの必要性が増してきたいま、訪問看護をする場合には看護婦がその病人の状態を見きわめることができなければ、やっているケアは不十分で、ある意味では危険な場合もあります。心筋梗塞の3分の1は痛みがありませんし、肺炎の半分は熱が37℃以上にはなりません。

 

 

 

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