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ですから、なぜ具合が悪いのかを家族は心配するのですが、「熱はないからいいでしょう」とか、あるいは「胸が痛くないから心配ないでしょう」といってそのままにしておくと、手遅れになってしまう。熱がないというのは、37℃以上ではないということであって、一般に老人の平熱は低いのです。私は自分の熱を毎朝計りますが、論文の執筆で2時間くらいしか寝なかったときなどは5度2分くらいです。ですから、それが6度2分になっていればはっきりと発熱していることになります。熱があるというのはその人の平生の体温よりも高いというのをいうのであって、平均は適用できないのです。そういうことを考えて訪問しないといけないのです。ですから、家族の人には、「お元気な時の体温は何度なのか計っておいて、私に知らせてください」と情報を提供してもらうように家族を教育しなければならないのです。最新の医学知識は参考書を読めばわかります。患者の健康情報をどう伝えるか、こういうことが本当の健康教育なのです。

いままでの看護は、医師と同じ場所で働いていたところで提供されてきたのですが、家庭看護が主になってきますと、どうしてもその場で必要とされることは全部しなければならなくなります。これからは看護にも診断や治療の役目が入ってくるということ、誰ともチームプレイをやるようにすることが大切になるでしょう。アメリカはすでに30年前からこれが行われています。しかし、一方ではアメリカの医療はいま激変していますから、看護もまた大きく変わるかもしれません。それと同じように日本の看護も変わります。

 

 

 

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