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しかし、死に至る病いをもつ人とかかわれるのが医師なのです。そのように考えれば、私たち医師は近代的な診断学や治療医学だけではなしに、患者さんの痛みをもっと取り除いて、苦しまないようにするという対症療法を目指さなければならないのではないかと思うのです。このためには、現在ホスピスで行われているように、モルヒネを上手に使うことによって痛みを取り除くといったような、苦しみをできるだけ少なくするという医学がさらに開発されていく必要があるということです。

そして、どうしても死ななくてはならないということになれば、死んでいくその日まで、何とかその人の悲しい思いやつらいこころを支えることを医師もまた仕事としなければならないのです。

 

ケアの概念は広く、大きく、深いもの

 

ここには看護婦さんが大勢おられます。看護婦はケアをその仕事としています。では、このようにカタカナで表記されている“ケア”とはどういう実態を表す言葉なのでしょうか。

福沢諭吉先生には、「病人を世話するとはどういうことか」と論じた文章が『学問のすすめ』の中にあります。病人を本当に居心地のいいような状態にするということと、一方では苦い薬でも教育して飲ませることでその病気と闘うことができるように導く、この2つの意味があると書いています。また、俳人の正岡子規は、自分が結核で長いこと寝たままで家族の介護を受けてきた経験から、患者の側からみた看護人のやるべきことを“介抱”という言葉に触れながら見事に論じています。

 

 

 

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