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私はよく外国に出かけます。北欧に行ったときのことです。スウェーデンから帰るときでしたが、ストックホルムから日本への直行便がないのでロンドンで乗り換えました。ロンドンのヒースロー空港では、「日本へ行かれる方はターミナル2番へ行ってください。バスが用意されていますから」というアナウンスがありました。この場合、ターミナルというのは終着という意味ではなく、出発という意味です。言葉では、「もうそこで終わり」という意味で解されるのですが、空港などでは、出発であると同時に到着という2つの意味が含まれていますので、必ずしも日本人がこだわるような思いは抱かないのではないかと思います。

厚生省のある方が、“終末医療”という言葉には悲しい雰囲気があるように思えるから何かもっと別の呼び方を考えてほしいと私に頼まれたことがあります。そのとき、私もいろいろ考えてふと“有終の美”という言葉を思い浮かべました。この言葉は文字通り「終わりある美しさ」という意味です。そこで“有終の医療”と呼ぶのはどうかと提言したのですが、残念ながら採用にはならなかったのですが、本日は“ターミナル・ケア”という言葉に、「有終の美」を連想するように理解していただきたいと思います。

 

はじめと終わり

 

古来よりさまざまの哲学者や文学者、詩人などによってこのはじめと終わりについては論じられてきました。新約聖書の「ヨハネの手紙」の冒頭に「初めに言葉があった」とありますし、旧約聖書の創世記にも「初めに、神は天地を創造された」とあります。私もこの言葉に関心をもちましていろいろ調べたことがありますが、詩人のロバート・ブラウニング(1812〜82)は次のように詩っています。

 

 

 

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