しかし、現代は自分というものが確立していないと、人間関係が自然に築かれるということが少なくなったため、孤立感や孤独感に陥るようになるのです。高齢化が進む中で、平均すると女性が84歳、男性が76歳まで生きるようになってきて、退職した後も、会社という人間関係が保証されていた組織を離れて、自分で人間関係を築き、生活していかなければならなくなりました。精神的に自立していないと、人間関係を築くことは容易ではありません。会社にいれば上司と部下、あるいは同僚などという枠の中で、ある一定の人間関係は保証されます。しかし、そうしたものがなくなってひとりになったときに、人間関係を築いていくのはとても困難なのです。高齢化が進んで、退職後の人生はまた長くなりました。また、少子化の中で育った人は、ソーシャルスキルが不十分で、どのように人間関係を築いてよいかわからないという問題を抱えています。社会的引きこもりなどはその一つの現れといってよいでしょう。
家庭的問題:
さらに家庭的な問題で危機に陥ることがあります。私は家族関係のカウンセリングも専門にしていますから、臨床の場でも数多く扱います。家族の問題は非常に根が深いのです。たとえば夫婦の問題ですが、以前は大家族でしたから夫婦2人だけになる時間は生涯でもそう長くはなかったでしょう。しかし、現代は子どもの数が1人か2人ですので、子どもたちが成長してしまうと夫婦だけになり、互いに向き合わなければいけなくなります。夫婦が正しくかかわっていないと、2人だけ残されたとき非常に大きな問題があったことに気づかされます。それらを埋めていくプロセスというのはそれほど容易なことではありません。