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序文

 

少子化が進行し就学前の子どもの数が減少していますが、近年、保育所入所児童数は増加しています。3歳未満児、とりわけ乳児の入所が増えています。今後ますます女性が社会に進出し、就労が拡大する中で、乳児保育のニーズは増大するものと予想されます。

しかし、一方には「3歳児神話」という考え方が根強く残っています。これは、子どもは3歳までは母親が育てないと、その子は健全に成長しないという考えです。既婚女性を対象とした調査でも、多くの人が「子どもが小さいうちは、母親は仕事をもたず家にいるのが望ましい」という考えに賛成していますが、果たしてこのような認識は、正しいと断言することができるのでしょうか。

母親は子育てに専念すべきだという考え方は、第二次大戦後、我が国の産業構造が変化していく過程で、男性は被用者化して給与所得者として働く者が増え、多くの女性は家庭で家事や育児に当たる専業主婦となり、「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業意識とともに定着したものと思われます。「子育ては母親がするものだ」という固定観念は、農林漁業等の第一次産業が中心の時代にはあまり強くなく、母親も労働力として農作業等に従事していた時代には、祖父母や兄・姉など家族の構成員全体が子育てに協力していました。また、都市化が進展していなかった頃には、子育てにおいても地域社会の中で相互扶助機能が働き、いわば「社会的親」(子育てサポーター)が大勢いたのです。

最近よく、「密室育児」ということが話題になります。若い母親と小さい子どもが一対一で長時間密着した生活をしていると、互いにストレスがかかり、問題が生じることが多いといわれており、まれには虐待につながることがあるといいます。

 

 

 

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