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(3) 5歳児の絵

子どもは5歳になると、紙の下端に茶色のクレヨンや絵の具などで地面を描き、紙の上の方には、青色で帯状に空を描き、下の線は地面を表し、上の方の青は高い所の空を表すという様な絵を描く。その必ず描く紙の下の線を、アメリカのローウェンフェルドは、「基底線」と名付けている。この5歳児の基底線のある絵は、頭足人と同様に、これも大人から教わった描き方ではない。これは、心身の発達に沿って、次第に社会性や「物と物との関わり」などが育ち、その中で自ら獲得した力である。

 

3、発達区分の諸説

子どもの発達段階からみた絵画や描画の研究は、19世紀末から始められているが、発達には個人差も大きい為、安定した発達区分を得ることは困難である。ここでは、代表的な研究者による諸説をあげてみる。

(1) ローダ・ケロッグ<Rhoda, kellog>

サンフランシスコのゴルドン・ゲート保育学校の教師で、14か国の2歳から8歳までの子どもの線画、20万枚という資料をもとにして、絵の発達の具体相をとらえていく研究をした。彼女は、絵画表現の基礎を左右上下のシンメトリーな十字形と円とのバランスのとれた結合にあり、しだいに発展していくという形で、子どもの絵をとらえていった。例えば、絵画表現の基本的五段階を、1]なぐり描き(基本的スクリブル)、2]図式(ダイアグラム)、3]図式の組み合わせ(コンバイン)、4]図式の集まり(アグレゲイト)、5]絵画的なものとしている。<図2-3>また、なぐり描きの型を20個の基本型にまとめ、さらに図式を6個の基本型、1]正十字形、2]正方形、3]円形、4]三角形、5]異常形、6]斜め十字形にまとめている。これらの基本型を覚えると、あとはこの組み合わせにより、しだいに絵画的なものに発展していくという事が証明された。

 

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<図2-3> ケロッグの描画表現発達の模式図

 

 

 

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