第4章 現在の幼児画とケロッグの研究との比較
イギリスの美術視学官のトムリンソンは、「子ども達の発達は、一定のはっきりした段階を通過する」と述べている。しかし、「はじめに」でも述べた様に、現在と過去では子ども達を取り巻く環境が、かなり変化してきている。環境が変化してくれば、子ども達に与える影響も変わるはずである。従って、幼児画の発達過程にも影響を与えているのではないだろうか。現在の子どもの幼児画は、札幌国際大学付属幼稚園の園児によって描かれた87枚の幼児画を用い、過去の子どもの幼児画としては30年前に子どもの発達を研究し、定説として認められているローダ・ケロッグの発達過程を用いて比較する。
幼児画87枚を<図4-1>のローダ・ケロッグによる児童画の発達段階に従い、「1、スクリブル」から「11、比較的完成に近い人間像」までに区分してみる。どんな種類があるか、どんな特徴があるかを見て、一定の段階を通過しているか、それとも変化しているのかを検証していく。
1、 ケロッグによる児童画の発達段階(1969年)
<図4-1>下から上へ、初期のスクリブルから「人間」への進歩を示す。1]一番下がスクリブル、2]ダイアグラムとコンバイン、3]アグレゲイト、4]「太陽」、5]「太陽の顔」と「太陽人」、6]頭頂に描き込みのある「人間」、8]腕なし「人間」、9]各種の胴をもつ「人間」、10]胴に腕のついている「人間」、○比較的完成に近い人間像。