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結合モデルに与える初期状態をより正しく作るため、また、フロートの観測点よりも時間的に空間的に密な資料を得るため、データ同化モデルと呼ばれるモデル(手法)の開発も行われています。観測された資料から、単に内挿や外挿、あるいは平均したりするのではなく、海水の運動と熱や塩分を支配する方程式(物理法則)を利用して推定するやり方です。データ同化とは、ある程度誤差を含む観測結果と数値モデルによる結果との差が、最小になるようにモデルの場を調節することです。これが実現しますと、モデルで得られた値をあたかも観測値のように扱えることができます。大変難しい、まだ開発すべき点が多い手法ですが、研究者はこのモデルに大きな期待を持っております。この努力も現在世界的な枠組みで行われており、GODAE (Global Ocean Data Assimilation Experiment: 全球海洋データ同化実験)計画と呼ばれています。ARGO計画はまた、GODAE計画に無くてはならない計画なのです。

 

5.3. ARGO計画とJason計画

ARGOという名前の由来はギリシャ神話から来ています。Jason (ジェイスンまたはギリシア語読みではイアソン)が、金の羊毛(Golden Fleece)を取り返しにColchis国へ遠征したときに乗船した巨大な船の名前です。様々な冒険を経てJasonは金の羊毛の獲得に成功し、帰国しました。船には当初、Jasonの他、ヘラクレスなど49人が乗り組んでいました。これらの乗組員を「Argonauts」と呼びますが、転じて何かを探しに遠征する冒険家を指すようになっているようです。

諸外国では、研究計画を表す英文名の頭文字を取ってニックネームで呼ぶことが多くなされています。このようなこともあり、ARGOは「Array for Real-time Geostrophic Oceanography (即時的地衡流海洋学アレイ)」のアクロニム(頭文字をとった省略語)であるともされています。しかし、「地衡流海洋学」とは、海洋の研究者でもすぐにはぴんとこない名前です。これはまったくの余談ですが、ある研究者は、「Advanced Research for Global Ocean(全球海洋の先端的研究)」とでも言い換えた方がいいのではと提案していました。やはりARGOは、ギリシア神話に由来するARGOで良さそうです。

一方、英雄Jasonの名が冠された計画も有ります。Jasonは、2001年3月に打ち上げが予定されている海面高度(海の高さ)を計測する人工衛星に付けられる予定の名前です。1992年夏に打ち上げられ、現在も稼動し、多くの成果を出しているTOPEX/POSEIDON衛星の後継機となるものです。正に、JasonとARGO、一体での運用を考えているのです。

 

 

 

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