文献名:気候識会(I)地球温暖化と私たちの生活
地球温暖化の社会・経済への影響と防止対策
講演者:村上勝人 編集:気象庁気候・海洋気象部海務課
出典:気象44・6、pp34-38. 発行年:2000年
本調査に関係する主な内容
・東京の気温は100年間に2.9℃の割合で上昇している。大都市全体でも100年間に2.4℃上昇している。
・熱帯夜(最低気温が25℃以上の日)の年間日数の変化をみると、東京では、戦後間もなくは十数日から20日前後であったが、最近は40日を越えている。1999年は46日で、過去最高であった47日(1994年)に肩を並べた。
・上記事項は、地球規模の温暖化に加えて、都市の廃熱などによる都市気候が重なったためと考えられる。
・1930年頃は30年に1回程度の異常高温が、最近は多いときで十数回、平均しても6回程度発生しており、異常高温の発生が増加している。一方、異常低温は1940年代に多い時期があったが、その後減少し、最近は異常低温があまり発生しなくなった。また、異常高温の発生の年々変動が激しいことが最近の特徴といえる。
・地域によって温暖化の状況にはかなりの差がある。1975年頃の前後20年間で気温を比較すると、グリーンランドやブラジルのように気温が下降しているところもある。主な気温上昇域は北半球側に現れており、特に北半球高緯度側の大陸において気温の上昇の傾向が強く現れている。このような特徴は冬の気温に顕著に現れ、モデル実験で温室効果ガスの影響を取り入れて再現した状況と良い一致を示している。このような気温の上昇が温室効果ガスによってもたらされると推論できる根拠ともなっている。
・日本では長期的な年降水量の推移に増加傾向は見られない。むしろ、100年で6%程度の割合で減少傾向である。
・月平均雨量で異常多雨、異常少雨をみると、1960年代を境にして、日本では異常少雨が起こりやすくなっている。
・世界では、雨の状況は100年で2%程度の上昇傾向がある。これも気温と同様に、地域によっては増えるところ、減るところが存在する。ヨーロッパやアルゼンチンでは異常多雨が増える傾向がある。一方、アフリカ域では異常少雨が増える傾向にある。
・二酸化炭素濃度は、1800年頃を境に大幅に増加している。1800年頃は産業革命が始まった時期であり、それ以前は約280ppmvであった二酸化炭素濃度が、現在は約380ppmvに増加しており、特に、近年増加の割合が急になっている。