文献名:21世紀型海洋自動測システムの最適設計に関する調査成果報告書
編集:財団法人 日本海洋科学振興財団 発行年:2000年
本調査に関係する主な内容
(1) Argo計画に関する国際的動向
・Argo計画によって塩分のプロファイルを全球に渡って定期的に取得することが始めて可能となる。
・海洋の内部構造を時期・場所によらず、自動的かつリアルタイムにモニタリングできる有力な観測手段として中層フロートが考えられる。
・1999年3月に開催されたGODAE/Argo合同会議では、希望的観測も含めて各国が毎年投入できるフロート合計数は年間約700個となり、4年間に渡って投入すれば、ほぼ3000個のフロートを確保できる。
・1999年4月に開催された第9回日米コモン・アジェンダ次官級会合において、米側から日米間のArgo計画協力推進を要請された。日米協議の結果、国際法に従って、Argo海洋観測計画の促進のため協力し、関係国等と協力してArgo計画実施のための方途につき研究することが確認された。
・中層フロート投入の問題点として、フロートが他国排他的経済水域・領海等へ流入する危険性、国連海洋法条約との関係、使用済みフロートの回収方法がある。
・1999年5月に開催されたWMOの第13回会議において、「世界気象会議はArgo計画をG00S、GCOSにおける業務的海洋観測システムのコンポーネントの一つとしてエンドースする」旨最終報告書のgeneral summaryに盛り込まれた。
(2) フロートによる観測
・最適投入位置算出は、遺伝的アルゴリズムのような大域探索法が有効と考えられるが、この計算のためには海域代表性に関する情報が必要である。
・簡易なフロート投入方法の開発を推進し、導入手段の選定と最適投入位置の算出方法との兼ね合いを考慮する必要がある。
・大量にフロートを投入する前に、少量のサンプルフロートを回収可能な形でフィールドテストできる方法を考える必要がある。
・長期間安定した性能を持つ塩分センサーの開発が必要である。
・センサー精度検証のための観測・較正システムおよび過去の観測データの使用方法についても十分検討すべきである。
・フロートからのデータ通信手段として、現状のアルゴスシステムでは不十分である。送信データ量を大幅に増加できるようなシステムやフロートの送信電力の無駄を省くために、双方向通信の可能な通信システムも実験すべきである。
・海洋循環の総合的な解析を行うためには、数値モデル並びにフロートデータと船舶・衛星データの複合同時同化システムを発展させる必要がある。データ同化の結果得られた4次元データセットに基づく海洋表面の熱・塩フラックスの評価は気候変動の解明に極めて重要である。