(2) 計算結果
衛星観測の解析による台風域内の波高分布と波浪計算の各RUNによる波高分布を比較した結果を図3.13に示す。左側が衛星観測、中央が従来手法の風を用いた波浪計算、右側が衛星に基づくモデル海上風を用いた波浪計算を示し、上下方向には進行速度を変えた結果を載せている。この図から以下のことが言える。
・ 従来手法の風を用いた波浪計算は、進行速度が速いほど進行方向右から後方の波高が高くなっており、定性的に衛星観測と一致している。
・ 衛星に基づくモデル海上風を用いた波浪計算は、進行速度が遅い場合(10km/h以下、11〜24km/hの場合)は定性的に衛星観測と一致しており、進行速度が速い場合(25km/h以上の場合)は、衛星観測に比較して波高が小さい結果を示している。
以上のように従来手法の風を用いた波浪計算では定性的に衛星観測の波高分布と一致しており、前項で示した波浪計算による台風域内の波高分布の特性が、衛星データからも確認できたと言える。衛星データに基づくモデル海上風を用いた波浪計算では、進行速度が速い場合に波高が低く算定された。これは、ERS衛星の風速測定範囲は1〜28m/sであるので、28m/s以上の強風を衛星データは過小に評価しており、これにより、モデル海上風は台風の進行が風場に与える影響を過小に評価している可能性があると考えられる。その違いが波浪計算の結果に違いを与えたことが考えられる。
3.4 まとめ
TOPEX/Poseidon高度計により測定された波高データを用いて、台風域内の波高分布を解析した。解析期間は1992〜1999年の8年間であり、対象とした台風の個数は115個である。統計に用いたデータ総数は約43200個、各領域の平均波高を算定するために用いたサンプル数は少ないところでは100個を割っており、それぞれの領域で異なることに注意しなければならない。しかし、台風中心においてサンプル数が少ないが、中心から離れるに従いサンプル数は増加するので、中心を除く統計値の信頼性は高いものと考えられる。
解析結果によると、台風の勢力に依らず、進行方向右側の海域で最も波高が高い。