1] 波高分布
・ 台風が停滞のとき、中心付近が最も波高が高く、分布は同心円上をしている。
・ 台風が停滞のとき、995hPaでは最大波高が4mにも満たないが、940hPaでは8mを超えている。
・ 台風が進行するとき、最大波高は進行方向の右側からやや後方にかけて現れる。
・ 台風の進行速度が速いほど進行方向右側の波高は高くなるが、中心気圧によってその程度は異なり、中心気圧が940hPaではその程度が最も大きい。
・ 台風が進行するとき、停滞時に比べ中心近くの進行方向左側でも波高が高くなる。
2] 周期分布
・ 台風が停滞のとき、周期は同心円上に分布しており、中心気圧が低いほど、周期が長くなる。
・ 台風が進行するとき、周期は非対称に分布し、中心気圧と進行速度の組み合わせによって分布形状が変わる。
3] 波向分布
・ 台風が停滞のとき、波向は円周方向に左回りの成分を持ちながら中心から外に向かう向きに分布し、細かくみると、中心に近いほど円周方向の成分が大きくなる。
・ 台風が進行するとき、全体的に台風の進行方向に沿う波向の成分が大きくなるが、その程度は中心気圧と進行速度の組み合わせによって異なる。
以上のような波高、周期及び波向の特性から、従来から言われているように、台風域内の波浪の発達及び伝搬について、次のように考えることができる。
・ 台風が停滞のときは、風速の分布は中心付近で最大となる同心円状となり、これに合わせて中心付近で最大の波が発達し、中心から外側に向かって伝搬していく。
・ 台風が進行するとき、風速は進行方向右側で強くなり、そこでの風向は概ね進行方向と一致しており、これに合わせて右側で最大の波が発達し前方に伝搬して行くが、台風自身も前方に進行するため、波の伝搬速度と台風の進行速度が近いと、前方に伝搬した波は台風中心域から抜けることができず、強風を長時間受けることで更に発達を続ける。
・ 波浪エネルギーの伝搬速度、いわゆる群速度は周期に依存し、周期は風速に依存することが分かっている。したがって、風速に応じてそれによって発達した波浪の群速度が決まるため、最大風速は中心気圧に依存するとした場合、その中心気圧によって効率よく波浪を発達させる台風の進行速度が変わることになる。