なお、1]の全データについては、波高のばらつきの程度をみるために標準偏差の分布も作成した。
1] 全データ(全台風)
2] 中心気圧別の台風を比較(〜959hPa、960〜989hPa、990hPa〜)
3] 進行速度別の台風を比較(〜10km/h、11〜24km/h、25km/h〜)
4] 中心気圧を限定して進行速度別の台風を比較
(960〜989hPaかつ〜10km/h)
(960〜989hPaかつ11〜24km/h)
(960〜989hPaかつ25km/h〜)
解析結果を図3.3〜3.4、図3.5〜3.7及び図3.8〜3.9に示す。図3.3〜3.4の上図はKu band(13.6GHz)、下図はC band(5.3GHz)による台風域内の波高または標準偏差の分布図である。図からわかるように、両者には大きな差異は見られない。ここで、有義波高を最小0〜1mから1m刻みで、最大9m以上の10階級の色で示している。図3.5〜3.7では左側にKu band、右側にC bandの結果を示し、上下方向で台風の中心気圧や進行速度別に統計を取っている。図3.8〜3.9は台風域内の波高の断面図を表す。ここで前方とは台風の進行方向であり、各方位の波高は、自分と両側方位を含む3方位の平均値である。
巻末資料には統計に用いたデータサンプル数を掲載する。これによると、台風中心域ではサンプル数は少なく統計値の代表性が小さいが、中心から100km以上離れた領域ではサンプル数は多く存在し、統計値の代表性が高いと言える。
以下に、これらの図を参考にした、1] 全台風、2] 中心気圧別、3] 進行速度別、4] 中心気圧を限定して進行速度別、の4観点からみた場合の波高分布の特徴を述べる。
1] 全台風(全データ)
図3.3〜3.4と図3.8によると、次の波高分布特性が明らかになる。
・ 高は台風中心で最も大きく、外側に向かって減少する分布を示す。
・ 波高は同心円状に分布せず、波高勾配は各方位で異なる。
・ 台風の進行方向の右半円が左半円より波高が高い。
・ 最大の波高(7m以上)は、台風中心付近の進行方向右側で現れる。
・ 4方位でみると、どの距離でも進行方向右側の波高が一番高い。
・ 4方位でみると、中心付近を除いてどの距離でも左側の波高が一番低い。
・ 波高の標準偏差は中心に近いほど大きく、また進行方向右側で大きい傾向にあり、波高の相対的な分布と概ね一致している。