(1) 中心気圧による違い
図2.5は、色々な中心気圧の範囲毎に同様の解析を行った結果である。気圧の範囲は、上から、959hPa以下、960〜989hPa、990hPa以上である。いずれの結果も図2.2と同様の風向・風速分布の特徴がみられる。即ち、進行方向から見て右側は左側よりも風速が大きく、風の吹き込み角が、前方よりも後方の方が大きいということは、中心気圧に依存しない共通の特徴であるといえる。右側の風速が左側よりも大きいことは、台風域内の風が、気圧分布による風と、台風の進行に伴う風とが複合した結果であると考えることができる。また、台風の進行方向の右側は危険半円、左側は可航半円と呼ばれ、右側の風速の方が大きいことは経験的にも知られていることである。次に、中心気圧と風速との関係をみると、中心気圧の低い台風の方が中心付近の最大風速が大きいことはよく知られている(例えば、高橋(1969))が、ここでは最大風速だけではなく、台風域内の風速全体が大きい傾向にあることがわかる。
以上台風の進行方向からみた16方位別に風向・風速の特徴を調べたが、これらを台風の右側、後方、左側、前方の方位毎に平均してその特徴を更に調べた。中心気圧毎の、風速の断面図(中心からの距離に対する風速の分布)と吹き込み角の断面図を図2.6に示す。図2.6から分かる特徴は以下の通りである。
● 中心気圧によらず、右側の風速が最も強く、左側の風速が最も弱い。前方と後方はその間の風速で同程度の値である。
● 中心気圧が低い方が風速は強い。
● 中心気圧によらず、吹き込み角は中心付近の方が周辺と比べて概ね大きい。また、中心からの距離が200kmより外側では、内側よりも、距離による吹き込み角の変化が小さくなる。
● 中心気圧によらず、後方は前方よりも吹き込み角が大きい。
● 中心気圧によらず、左側は右側よりも吹き込み角がやや大きい。
(2) 進行速度による違い
図2.7は、台風の進行速度の範囲毎に同様の解析を行った結果である。進行速度の範囲は、それぞれ、0〜10 km/h、11〜24 km/h、25〜km/hである。また、進行速度に依らず、風速は右側が左側よりも大きく、風の吹き込み角は後方が前方よりも大きいという特徴がみられる。