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4. まとめと議論

気象庁編集の船舶観測データセットIMMTを用いて、海上10m高度への高度補正処理を行い、海上風ベクトル、スカラー風速および海面応力ベクトルの月平均場を導出した・これらと・高度未補正データとの比較を行うことによって、長期変動解析における高度補正の必要性の検討を行った。

上記の処理は、風速計観測が多くなった1960年代後半以降で有効であるが、COADSデータにおいて、今回対象とした北太平洋偏西風海域における東西風およびスカラー風速の時系列を見ると、年々増大する傾向が認められる。本研究の結果、海上風ベクトル場には、顕著な相違が見られなかったが、スカラー風速および海面応力ベクトルには高度補正の有無によって、有意な相違が認められた。このことは、十年或いは数十年といった長期変動に船舶観測データを用いた場合、観測高度の上昇に起因する擬似的増大傾向が存在することを示唆する。また、スカラー風速が関係する海面熱フラックス、海上風応力が関係する海水運動の駆動力の長期変動についても同様であると言える。

一方、高度補正後の時系列においても、依然として1960年代から80年代において増大傾向が認められる(図5b、図7)。これらの信愚性は否定できず、過去の同様な研究(e.g. Nitta and Yamada, 1989; Hanawa et al., 1996)における結果を支持しているといえる。

 

参考文献

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図1:測定方法に基づいて分類されたIMMTデータ中のVOS観測による海上風の年別頻度分布

 

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図2:WMO編集の国際船舶情報一覧(ILSSAS)に基づく風速計高度の年平均値と線形回帰直線

 

 

 

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