図2.2.25 15Nにおける30-60日周期成分のOLRアノマリーと10-20Nにおける熱帯低気圧の位置の経度−時間断面図ハッチを付けた部分がOLRアノマリーの負値 Nakazawa(1986)より引用
MJOが熱帯低気圧の発生に大きく関わっていることは事実である。しかしながら、MJOの成因や年変動、数十年変動の特徴など未解明な部分が多い。これらの研究が進歩するにつれて、熱帯低気圧の変動についても明らかにされると期待されている。
2.2.7 まとめ
以上の文献による調査結果を以下にまとめる。
(a) 北大西洋のハリケーン
北大西洋において発生するハリケーン活動はENSO、成層圏QBO、SST、サヘルの降水など周囲の環境要素の変動に大きく影響を受ける。各環境要素が、数年スケールあるいは数十年スケールの熱帯大西洋の循環場を変化させることにより、特に風の鉛直シアーが強い年にはハリケーンの発生数が少なく、その発達が抑制される。また、NAOに代表される中緯度の気圧パターンの変動がハリケーンの経路に影響を及ぼしている。この影響で、ハリケーンが北上しにくい年にはメキシコ湾岸で被害が大きく、転向して北上する年には東海岸で被害が大きくなる。
(b) 北太平洋西部の台風
エルニーニョ年には台風の発生数が平年に比較して少なくなり、台風の発生位置が東に変位する。成層圏QBO-西風偏差の年には、台風活動が活発であるとの報告があるが、双方の関係はハリケーンの場合に比較してあまり顕著ではない。また、150E以東の海域のSSTには数年スケールあるいは数十年スケールの変動がある。この変動により、例年西部太平洋に位置する対流活動の中心が変位し、台風の発生位置あるいは発生数が変化する。また、MJOに代表される季節内振動が台風の発生に深く関わっている。MJOの成因等が明らかにされれば、台風活動の変動の理解が進むと思われる。