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2.3 台風と海洋変動に関する解析結果

2.3.1 目的

熱帯低気圧の活動と海洋変動などの環境要因の関連については、2.2で詳述したように北大西洋において発生するハリケーンに関する研究例が多い。その中の一つであるLandsea et al.(1999)の報告では、簡単な統計解析手法を用いてこの種の多くの研究結果をレビューしている。ここでは、彼らの手法を北太平洋西部において発生する台風にあてはめ、台風の活動と様々な周辺環境要因の関係を調査した。

Landsea et al.(1999)は、年々のハリケーン活動とそれに影響を及ぼすと考えられている周辺の環境要因を、それぞれいくつかの適切な指数によって指標化し、各指数間のQuartile Mean Differences(QMD:2変量X、Yの関係を調査する方法の一つであり、Xの上位および下位25%によって構成された各グループのYの平均値およびその差、この場合にはXが環境要因、Yが台風活動に関する指数) や相関係数を求め、それらの統計的な信頼性を評価して双方の関係を調査した。

その結果の一部を表2.3.1に示す。この例は、ハリケーン活動に影響を与えると思われる6つの環境要素(具体的には8〜10月におけるENSO現象、風の鉛直シアー、カリブ海の気圧、北大西洋の海面水温、成層圏QBO、サヘル地域の降水量)について、統計期間内(ここでは1950-1990)におけるハリケーンの発生数、存在日数、強度、被害額のQMDおよびその統計的な有意性を示している。

例えば、エルニーニョ現象の指標であるNino3.4(5S-5N、170-120W)SSTの高温年(解析期間:1950年〜1990年のうち高温年の上位25%)におけるハリケーンの発生数は年間4.9個であり、低温年(同下位25%)には6.7個発生する。その違いは有意水準99%レベルで統計的に有意であり、エルニーニョ年においてはラニーニャ年に比較してハリケーン発生数は少ないことを示している。同様に、対流圏の風の鉛直シアーが小さい年、成層圏QBOの西風偏差年、カリブ海の海面気圧が低い年、西サヘル地域の降水が多い年にはそれぞれ逆位相の年に比較してハリケーンの発生数、存在日数、強度が大きく、その差は99%レベルで統計的に有意である。彼らはハリケーンの年々変動に特に影響を及ぼす環境要素として、風の鉛直シアーとカリブ海の海面気圧を挙げた。また、北大西洋熱帯域のSSTの年々変動は対流圏の変動と同位相ではなく、SSTがハリケーンの年々変動に及ぼす影響は比較的小さいと評価している。

以下、2.3.2節では解析に用いたデータ、2.3.3節では具体的な解析手法、2.3.3節では解析結果を示す。また、2.3.4節では、台風活動と関連の深い環境要素に着目して、双方の関連性の実態を明らかにし、それについての若干の考察を述べた。

 

 

 

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