また、強いハリケーンの3/4以上はアフリカ地域において発生した偏東風波動を起源として発生する。Landsea et al.(1992)は、西サヘル地域のwet期に発生する熱帯低気圧数の増加の理由の一つを、偏東風波動から成長する擾乱の増加によると考えている。西サヘルの湿潤年には一般場が変化し、偏東風波動が熱帯低気圧に発達する時の好適な条件となる。特に、それら熱帯低気圧は強大なハリケーンへと発達しやすい。西サヘルの乾燥年においては、一般場が偏東風波動起源の熱帯低気圧の発達にとって好適な条件ではない。700hPaにおける流線や地上気圧などの観測的事実は、この仮説を支持している。
西サヘル地域の降水が、短期的にも長期的にもハリケーン活動と関係のあることは分かっているが、降水現象が何故変動するかの問いに対しては、満足な回答が得られていない状況である。Gray et al.(1996)は、北大西洋のSSTダイポールパターンや西サヘル地域の降水、北大西洋のハリケーン活動の数十年変動はほぼ同位相であることから、それらの原因が北大西洋高緯度における深層水の形成にによって起こる、大西洋を南北に移動する熱塩循環の速度の変化にあるのではないかとの仮説を持っている。この仮説を支持する幾つかの観測結果が提示されているが、現時点では、熱塩循環の速度の変動があったのか、あるいはそれが気候変動に影響を与えているのかについて確実なことは言えない。
2.2.5 中緯度変動と熱帯低気圧の活動
数十年以上のタイムスケールにおいて、北大西洋のハリケーン活動が高緯度(低緯度)において活発(不活発)な時には、低緯度(高緯度)において不活発(活発)である。Elsner et al.(2000)は、この原因を北大西洋振動(NAO, North Atlantic Oscillation)の強度に関連づけている。NAOとはアゾレス諸島のPonta DelgadaとアイスランドのSkykkisholmurの標準化した海面気圧差に基づいた指数であり、地域的な気候振動を表現するだけでなく、地球規模の重要な循環パターンを表している。