本節の最初に示したように、SSTが高温の海域においては発生する台風の最大強度は大きくなる。従って、Nitta(1987)が示したようにSST偏差が平年よりも高い海域に対流活動の中心が移るとそこでの台風活動が活発になる。しかしながら、北大西洋におけるエルニーニョ時のように、SSTの年々変動は大気大循環の位相と異なる場合があり、必ずしもSSTの高温年に台風の活動が活発になるとは限らない。また、SSTの数十年スケールの変動は大気大循環場に影響を及ぼしており、熱帯低気圧の活動の長期変動に影響を与えていると考えられる。
2.2.4 サヘル地域の降水とハリケーン活動
北大西洋におけるここ数十年の弱いハリケーン活動は、西サヘル地域(アフリカ西部地域の10〜20N帯)の降水量の減少に大きく関与すると言われている。
図2.2.18 大西洋における強いハリケーン日数の経年変化 Gray et al.(1996)より引用
図2.2.17は西サヘル地域の標準化した降水量の経年変化を示している。西サヘル地域は1960年代末期を境にして、明らかにwet期からdry期に移行していることが伺える。また、図2.2.18に北大西洋における強いハリケーン日数の経年変化を示す。図2.2.17と図2.2.18から、強いハリケーン日数は西サヘル地域のwet期にあたる1969年以前に多く、dry期には極めて少なくなっていることがわかる。図は省略するが、強いハリケーンの発生数についても同様なことが言える。
また、1960年代後半から長期間続いているdry期にあっても、1988年と1989年のサヘル地域の降水が多い年には北大西洋の強いハリケーン発生数、ハリケーン日数ともに多い。