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図2.2.9 左図(右図)は30hPa高度が西風偏差(東風偏差)かつ西風(東風)が増強する期間におけるハリケーンの経路図 Gray(1984)より引用

 

図2.2.9左図(右図)は30hPa高度が西風偏差(東風偏差)かつ西風(東風)が増強する期間におけるハリケーンの経路図を示している。東風偏差期(右図)に比較して西風偏差期(左図)にはハリケーン活動が活発であることを示している。Gray(1984)は、北太平洋西部ではこの現象が顕著でなく、むしろQBOが東向きの年に台風の活動が活発な傾向にあると述べた。

Chan(1995)は、北太平洋西部ではQBOよりもENSO (El Nino - Southern Oscillation)が台風活動に及ぼす影響が大きいと述べた上で、台風発生数の時系列データに対しバンドパスフィルターを用いて20ヶ月以下と40ヶ月以上の振動を取り除き、成層圏QBOとのクロススペクトル解析を行った。その結果、台風活動が成層圏下層(30,50hPa)の西風偏差の位相に2ヶ月遅れていることを見出した。この結果は大西洋の場合と同様に、成層圏下層の西風が強くなったときに、北太平洋西部において台風が増加することを示している。しかしながら、北大西洋におけるQBOと台風活動の顕著な関係に比較して、北太平洋西部の場合は双方の間にさほど大きな関係は検出されていない。

QBOと熱帯低気圧の活動の間の物理的なメカニズムは明らかにされていないが、Gray et al.(1992)は以下に述べる2種類の物理的根拠を提案している。

まず一つ目を図2.2.10に模式的に示した。上図は赤道付近における200hPa面、下図は鉛直断面の循環を示している。各図の左側(右側)はQBO東風(西風)偏差年である。QBOが東風偏差の場合、赤道上空の成層圏の気温は低く成層圏の厚さは薄くなる。その結果、赤道域の対流圏界面が上昇し、左下図のように対流圏上部のジオポテンシャル高度が高くなり、結果として対流圏上層に南北方向の気圧傾度が生じ、赤道域から極側へ大気が移動する。左上図に示すように赤道上部対流圏から発散された風の偏差は、モンスーンの収束域である赤道から南北に少し離れた地域の偏東風を妨げる効果がある。また、この風偏差は北緯・南緯12°付近の上部対流圏のモンスーン循環や対流活動の発散を抑制する働きがあり、結果的に熱帯低気圧の活動を抑制する。

 

 

 

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