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しかしながら、Lander(1994)は台風発生数と太平洋東部熱帯域のSSTやSOI(Southern Oscillation Index)の間に有意な相関関係はないことを示した。確かに、北大西洋の場合はエルニーニョ年の熱帯低気圧の発生数が非エルニーニョ年の60%以下に減少しているのに対し、北太平洋西部の場合には90%程度であり減少の程度は小さい。

Chan(2000)はエルニーニョ年、ラニーニャ年それぞれの前年・当年・後年における、台風の発生数偏差の分布を月別に調査した。図2.2.6にその結果の一部(エルニーニョ、ラニーニャそれぞれの前年・当年)を示す。各図には発生数偏差を0.5個/年毎の等値線により表示し、統計的に有意な偏差の地域にはハッチが付されている。エルニーニョの前年、特に9月、10月は南シナ海における台風発生数が平年よりも多いが、日本の南東海域においては少ない。エルニーニョ年、特に9月、10月には南シナ海における台風発生数は平年よりも少ないが、西太平洋東部においては多い。ラニーニャの前年には有意な偏差は見られない。ラニーニャ年の9月・10月には南シナ海の台風発生数は多いが、同年の8月〜10月には南シナ海以外の海域において台風発生数が平年より少なく、特に西太平洋東部ではその傾向が強い。ラニーニャの後年には全海域において平年よりも発生数が多い。

Lander(1994)は、エルニーニョ年には台風の主な発生位置が東に変位することを示している。図2.2.7は各年における平均的な台風発生位置を示している。丸印に付した数値は西暦の下2桁であり、アンダーラインは気象庁の定義によるエルニーニョ年である。★は平均位置を示している。

 

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図2.2.7 各年における台風の平均的な発生位置を示している。丸印に付した数値は西暦の下2桁であり、アンダーラインは気象庁の定義によるエルニーニョ年である。★は平均位置を示している。Lander(1994)より引用

 

図2.2.7より、エルニーニョ年の平均的な台風の発生位置は、140Eより東に位置することが明かである。Lander(1994)はこの原因を西太平洋赤道域のモンスーントラフの変位と関連づけている。すなわち、ラニーニャ年においては西太平洋の低緯度の下層は東風偏差となり、年間を通じてモンスーントラフを太平洋の西側の位置に止める。それゆえ、平均的な台風発生位置が140Eよりも西側に位置する。反対に、エルニーニョ年においては下層が西風偏差となり、モンスーントラフが西太平洋東部に変位する。従って、エルニーニョ年には、台風の主な発生海域である北太平洋西部熱帯域での対流活動は弱まり台風発生数が減少するが、対流活動が東に移動することに伴いマリアナ諸島の東の海域では台風の発生が増加すると解釈される。

 

 

 

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