日本財団 図書館


図-3.2に異性体プロファイル(ダイオキシン類濃度(PCDDs+PCDFs+Co-PCBs)に占める各異性体濃度の割合)を示す。第一主成分の値が大きな試料であるSt.11の異性体プロファイルは、表-1.1に示す大気及び降下ばいじんの異性体プロファイルに似通っている。また、第一主成分の値が小さな試料であるSt.2の5層(38-40cm)の異性体プロファイルでは、OCDDが大部分を占めている。これらのことから、第一主成分の値が大きいほど大気及び降下ばいじんの影響が大きく、値が小さいほどOCDDを多く含むPCPの影響が大きいことが推測される。Ohsaki et al.(1997)12)及びMasunaga and Nakanishi (1999)によるPCPの異性体プロファイルは図-3.3に示すとおりである。大気及び降下ばいじんの異性体プロファイルとPCPの異性体プロファイルを比較すると、PCPはOCDDが多く、TCDF及びPCDFが少ないことが特徴として挙げられる。Masunaga and Nakanishi (1999)5)の測定結果から、23478-PCDF/OCDD比はPCPは小さく(0.00014〜0.0046)、大気及び降下ばいじんでは大きく(それぞれ0.088及び0.043)なっていることから、この比はPCPと大気及び降下ばいじんの起源推定の指標として使用できると仮定する。本調査で得られた調査結果について、23478-PCDF/OCDD比と主成分分析で得られた第一主成分の関係を図-3.4に示す。23478-PCDF/OCDD比と第一主成分は直線関係にあることから、第一主成分は値が大きいほど23478-PCDF/OCDD比が大きい、すなわち、大気及び降下ばいじんの影響が大きく、第一主成分の値が小さいほど23478-PCDF/OCDD比が小さい、すなわち、PCPの影響が大きいと考えられる。

第二主成分は、1368TCDD及び1379TCDDの主成分の影響が大きくなっていることから、CNPの影響を示していると考えられる。すなわち、第二主成分の値が大きいほどCNPの影響が大きく、第二主成分の値が小さいほどCNPの影響が小さいと推測される。

第一主成分と第二主成分の散布図を図-3.5に示す。右部(図中A)に位置する試料(St.11表層)は、大気及び降下ばいじんの影響が強いと考えられる。左下部(図中D)に位置する試料は第一主成分が小さく、PCPの影響を受けていると考えられるが、St.1-4層を除いて堆積年代が1950年以前となっている。図-3.6に日本におけるCNP及びPCPの使用量の変遷を示す。PCPの使用量は1960年代がピークとなっていることから、1950年以前にはPCPの影響は少ないものと考えられる。したがって、左下部に位置する各調査地点の5層及び6層の試料は、大気及び降下ばいじんと比較してOCDDの組成比が大きい物質が起源であると考えられる。上部(図中B)に位置する試料(St.1-3層、St.3-4層)はCNPの影響を強く受けていると考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION