採算性について述べたい。カーシェアリングによって大金持ちにはなれない。しかしながら、フライブルクのカーシェアリング組合では6人の正社員が十分生活できており、それだけの利益は上がっている。公共交通機関と組み合わせて使うカーシェアリングをめざしており、黒字を出すというよりも赤字にならないようにしながら、この目的は達成できていると思う。
ドイツでは近距離交通網でも採算がとれるように運営できるのでは?という意見もあるが、私自身は不可能と思っている。近距離交通網は行政の助成がないと成り立たない。
2. ヴォバーンについて
ヴォバーンはドイツで唯一マイカーなしで生活できる自治体である。
日本では車を買う時に車庫証明が必要だが、ドイツでは、車を持っていようと持っていまいと家に駐車場があることを証明しないと家を建てられない。
カーフリーシティー街区とは、マイカーがないこと、住民がマイカーを持たないことに対して規制が働いていること、マイカーの所有により発生する(駐車場の)コストを車を持たない市民が負担する必要がないこと、このような特徴を持った街区をいう。
ドイツの大都市では世帯の3割が車を所有していない。しかし、住宅にはガレージなどが必ず付随しているので、それらのコストを負担している。一方、ヴォバーンはカーフリーシティーであり、車を持っていなければ自分の家に駐車場がなくてもいいと認めた初めての街である。
フライブルグにはカーフリーシテイー・プロジェクトが2ケ所あった。1つはリーゼルフェルトといい、これは失敗に終わった。理由は、ここに住みたい人は生涯車を持ってはいけないというルールであったので、入居者がいなかった。
もうひとつのプロジェクトがヴォバーンである。ここは社会福祉型、環境指向型のプロジェクトであり、国連のハビタット賞を受賞した。特色は、はじめに車を持っていなくても、後に必要になった時に取得することを認めている点である。
地区内には市電が通っている。そして、近くに環状線の駅ができることになっている。車を持っている人は地区のはずれの駐車場(2カ所あり)を借りる必要がある。この駐車場は借りるというより買うのに近い。値段は34000マルク。車を持っている人は必ず2カ所ある駐車場のどちらかに車を止めることになる。荷物の上げ下ろしには車を入れてもいいが、最終的には駐車場に止めなければならない。
このコンセプトが実現するまで、地元の小さな自治体と激しい議論があった。ヴォバーン市の政府は反対したが市議会は賛成してくれたので実現に動いた。政府が反対した理由は、こういった形で開発されてしまうと土地が売れなくなるのではと懸念したためである。
ヴォバーンに入居した人の半数は車を持っていない。市の行政当局もこの低い所有率に驚いている。同プロジェクトでさらに開発を進めている区画では、現在、供給に対して3倍の申し込み者があり、非常に評判がいい。
ヴォバーンの街には他の街と異なった雰囲気がある。まず、子供たちが路上で遊んでいる。別の街に行く時に、路上で遊んではいけないと親が子供に説明するのがたいへんだと聞いている。ドイツでも80年前までは、路上でも人々の生活があった。路上は立ち話などのコミュニケーションの場でもあった。イタリアの田舎に行くと、今でも路上で日々の営みがなされている。ヴォバーンでは人々の生活に道路が戻ってきたといえる。
ヴォバーン成功の秘訣は「PUSH AND PULL」、略してP&Pシステムである。すなわち、一方では法による規制・枠組みを整え、もう一方では、車を所有するよりも安く決適に生活できる状況をつくるという、飴とムチの両方を使って成功した。