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今後のカーシェアリングは地域単位で発展させるべきであると考えている。私自身も、当初から地方を拠点に発展させることを考えていた。それは、カーシェアリングの中央団体のやり方を見ていてあまりいい方向ではないと感じたからである。

この中央団体はフランクフルトに拠点があり、全国一律のカーシェアリング網を張り巡らそうとしたが、結局失敗し、つい最近倒産してしまった。

同じフランクフルトに別の団体が誕生し、フランクフルトを中心とするラインマイン地方のみのカーシェアリング・システムを立ち上げた。ここはわずか数週間で非常な成功を修めている。

ドイツでは公共交通網も地域単位で良く整備されている。資料3-10の三角形のエリアは南バーテンにおけるドイツ鉄道の中核地域でもある。 鉄道だけでなく、その他の交通もこの地域で交叉している。カーシェアリングを公共交通網の中に組み入れるのが最終目的であるから、公共交通網の発達した当地でカーシェアリングを始めることとなった。

資料3-11に南バーデン地方の特徴を列記した。ライン川の渓谷にあり、黒い森がある。観光によって潤っている地域である。 村落が多く、戸建ての家が多い。南バーデンの州都であるフライブルクの人口は20万人である。

ドイツ全体では現在、190自治体に71のカーシェアリング団体がある。それらに所属する車は約2000台、会員数は約4万人である。

ドイツでは、カーシェアリングという考え方が環境保護政党である緑の党あたりから発しているので、元々批判的にみられるきらいがあった。政府、地方自治体からの金銭的な支援は一切受けずに始まった。また、公共交通機関はカーシェアリングをライバル視してきた。しかしながら、現在では自分たちの業務と補完関係にあることを認識してくれている。ごく最近になり、各州の運輸長官や、連邦の運輸大臣もカーシェアリングに助成金を出してくれるようになった。ドイツでは、カーシェアリングが都市部の交通問題を解決するための有効な手法になり得るという認識が官庁街に広がるまで10年かかった。

スイスでは状況が違っていた。アルプスの山々の環境破壊がひどいことから、早くから政府、各官庁がカーシェアリングの有効性を認めて、数年来助成金を出している。スイス連邦鉄道とカーシェアリングとの共同事業が政府の圧力によって実現しており、大変素晴しいことである。政府の圧力がなければスイスの連邦鉄道もここまで自発的にカーシェアリングに歩み寄る事はしなかったと思われる。

フライブルクのカーシェアリングは他の地方とは異なる特色を持っている。第一は、フライブルク全地域でカーシェアリングを適用しようとしている唯一の自治体であること。

シュバルツバルト(黒い森)地方でもカーシェアリングを導入している自治体はたくさんある。例えば、ホテルとタイアップしたカーシェアリングを行っているところもある。すなわち、列車に乗ってシュバルツバルトに来た観光客を駅からホテルに運ぶのにカーシェアリングを使っているホテルもある。フライブルクでは地方公共団体とタイアップし、公共交通網の一環としてカーシェアリングを検討してきた。

何を言いたいかというと、カーシェアリングは一人一人の消費者にとってのみならず、自治体、企業にとって魅力がある解決策だということである。

フライブルクのもうひとつの特色は、ユーザーである組合員が決定権を持っている点である。モビリティが重要なので、ユーザーの発言を取り入れ、ユーザーに決定権を与えている。

 

 

 

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