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本日はまず、カーシェアリングの歴史、普及の背景、将来性、現在の評価について述べたい。その後、具体例としてフライブルクのカーシェアリング・システムを取り上げ、その組織、運営、採算性について述べたい。最後に、自治体全体でカーシェアリングが適用されているヴォバーンという居住区について述べたい。ヴォバーンは世界初の誰もマイカーを持たない居住区であり、住民はカーシェアリングによって自分のモビリティを確保している。

 

1. カーシェアリングについて

カーシェアリングの発想の元々の背景は「もう少し社会に優しいシステムを作れないか?というものであり、ある哲学者の次の言葉が端的にこれを表わしている。

「豊かさというものは所有することではなく、使い方にあるのだ。」

言い替えれば、「環境に配慮したいのであれば、何かを共有する方向に進まなければ環境保全はうまくいかない。」というもの。

資料3-5のような状況は避けるべきである(笑)。

資料3-6はインターネットのとあるホームページからの引用である。これによると、カーシェアリングは個人交通とモビリティにおける革命であるとしており、私も同感である。ドイツでは近距離公共交通網の拡大を図っているが、フレキシビリティに欠けるという問題がある。この欠陥を、バスを必要に応じて呼んだり、乗り合いタクシーや一般のタクシーで補充するという考え方がある。しかしながら、例えば、家具を買ったら車が必要であるように、車を無くすことは不可能だといえる。しかし、マイカーである必要はなく、むしろ、必要に応じ必要なタイプの車にフリーアクセスできることが重要である。ドイツで数年前に実施されたある学術調査によると、ドイツでカーシェアリングが導入されれば180万台の乗用車が不要になるということである。私自身は実際にはもっといらなくなると思う。現在、ドイツでは4000万台の車が走っている。現在、フライブルクのカーシェアリングシステムに所属する車1台で通常のマイカー20台分の働きをしている。個人的には、フライブルクのシステムをさらに効率化し、さらに広い面積をカバーすれば、カーシェアリングの車1台で50台のマイカーが必要無くなると考えている。

年間走行距離の少ない車に投資するのは間違いである。具体的には、年間走行距離1万km未満のマイカーは必要無い。

フライブルクで使っているスローガンは「分かち合うことは結びあうこと。」というもの。カーシェアリングはいたって社会福祉型のシステムである。

カーシェアリングの特徴は、まず社会福祉型であること、つぎに、経済効率の非常に優れたモビリティを確約してくれるシステムであること、さらに、カーシェアリングを公共交通の中に組み込めば新しい展望が開けることなどである。

資料3-8は、現在、カーシェアリングの行われている地域を示している。アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、そしてカーシェアリング発祥の地であるスイスである。1台の車を共有するという考えは、元々はイスラエルから始まっている。

ドイツでは過去5年間でめざましい発展を遂げた。資料3-9で明らかなように、人口密度の高い地域で導入されてきた。例えば、ルール地方、シュツッドガルト(ベンツの工場がある場所)などである。

資料3-10の三角で囲まれた地域が、南バーデン州カーシェアリング協会でカバーしているエリアである。フライブルクとフランスのストラスブールで共同のカーシェアリングシステムを構築する計画が検討途上にある。実現すれば、カーシェアリングとしては初の国境をまたいだプロジェクトになる。

 

 

 

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