2. 事業性の検討
1) 利用料金の検討
ア. 主な料金設定の基本的考え方
カーシェアリングを普及させるための最大の推進力は、個人所有に比べて経済的であるということである。従って、利用者に受け入れられる料金設定は極めて重要な問題である。
一方、社会に広がるためには、事業として採算性を達成していなければならない。
日常生活において全く新しい車の利用方法であり、個人としても社会としても全く経験がない。社会的にカーシェアリングの効果を認められるものであるならば、その普及を目指し様々な条件を整え、市場を見極め育てていく視点が欠かせない。
以下に課金方法を考えるため収益構造を考え、収入項目の種類とその目的を整理する。
1] 保証金…会員の過失に起因する事業者のリスク回避のためのデポジット。退会時は返金する。
事業開始時は、開店資金の捻出にも効果がある重要な預り金である。
本来は、運営のための安全性を高めるよりは、高価な車両のトラブルに対する保証金と考えるべきで、その場合は、車両の購入に関わる初期費用を一台あたりの会員数で分割した額が適当と考えられる。リースで借り受けるときも同様の考え方ができる。
しかし、車の減価償却や会員の継続年数などもあり一概に割り出せない。例えば10年間会員である時、一台の車で対応することができず再購入しなければならないが、とにかく保証金の目安として購入費として会員人数分で分割して負担することが、一案としてある。その場合、150万円の車として一台当たり
15人とすると、概ね100,000円程度
10人とすると、概ね150,000円となる。
一方、加入者から考えれば、返却されるとはいえ、加入時に払い込む金額で負担に感じるものなので、加入を促進するのであれば、収入項目でもないので、営業的に引き下げることも考慮する必要があるだろう。一方、減価償却と車両保険等を保証金に相当させる考え方もありうる。
2] 登録料…初回の手続き等事務作業、カード等発行に対する諸費用に充当。
日常業務の一部とすることも、特殊作業として発生する費用を登録料として回収する考え方もある。ポートランドでは予約時に予約金を徴収している。
3] 年あるいは月会費…固定費に充当する。<幽霊会員を抑制する効果がある>
会費は、日常の事業の継続に必要とされる運営に関わる主に固定費分の負担を主とし、車両関連費用を除く分とする。通常の例では固定費相当分も時間、距離課金で回収している。
負担する対象となる経費は、
運営費(人件費、事務所家賃、諸雑費、その他)、通信費、広告宣伝費、自動車取得税、登録税、諸税、利息…概ね支出の30%程度。
固定費はかなりの割合があるが、これを利用とあまり連動させないことはカーシェアリングの狙いでもある不必要な車利用の機会を抑制することと矛盾する。
一方、全く取らないことは、幽霊会員を容認することになり、利用者と車の台数の安定した関係が推し量りにくい。一方、高くすると、あまり利用を考えない人は加入しなくなる。