II-2. 海上交通における高齢者や障害者に対する接遇・介助の必要性
II-2-1. 海上交通におけるバリアフリー化の整備状況
II-2-1-1. 旅客船ターミナルのバリアフリー化の状況
旅客船ターミナルのバリアフリー化の状況については、平成12年2月に運輸省が一日の乗降客数が5,000人以上の旅客船ターミナルについて調査した結果が公表されている。
1] エレベーター、エスカレーター等による段差解消
前掲の運輸省の資料によれば、エレベーター、エスカレーター等による段差解消を実施している旅客船ターミナルは、13ターミナル中10ターミナル(76.9%)となっている。
この数字は、旅客船ターミナルにおけるエレベーター、エスカレーター等による段差解消が進んでいることを示しているが、本データの調査対象旅客船ターミナルが、旅客船ターミナルとしては比較的規模が大きな施設であることを踏まえておく必要がある。
離島航路等のうち、生活航路としての位置づけが大きな航路においては、旅客船ターミナルの一日の利用者が1,000人に満たないターミナルが大半であり、昨年度実施した「高齢者・障害者の海上移動に関する調査研究」においても、本土側のターミナルではエレベーターとボーディングブリッヂを利用して乗降が可能であっても、離島側においては乗船タラップを利用して乗降しているケース等もみられた。
このように、エレベーター、エスカレーター等による段差解消を整備していくには特に離島側の地形等の問題で解決すべき問題も多く、人的な介助が一部必要なケースも当面は発生しうると思われる。
2] 障害者用個室トイレ
前掲の運輸省の資料によれば、障害者用個室トイレの整備率は13ターミナル中11ターミナル(84.6%)となっている。
障害者用個室トイレについても、エレベーター、エスカレーターのケースと同様に利用者数の少ない離島航路の旅客船ターミナルにおいては整備が進んでいないケースもあり、今後の一層の整備が必要となっている。
3] 視覚障害者誘導用ブロック
前掲の運輸省の資料によれば、視覚障害者誘導用ブロックの設置率は13ターミナル中11ターミナル(69.2%)となっている。
昨年度実施した「高齢者・障害者の海上移動に関する調査研究」において調査対象とした離島航路のターミナルでは視覚障害者誘導用ブロックが設置されていないターミナルもみられた。これは、バリアフリー法の移動円滑化基準にも記述があるように、波浪等により旅客が転倒するおそれがあるケースもあり必ずしも全ての旅客船ターミナルに敷設できないといった事情があることも影響していると思われる。
こうした場所においては、旅客船事業者等の職員等による誘導が必要になるケースも発生してくるものと想定される。