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I. 調査の概要

 

I-1. 調査の背景

I-1-1. 海上交通における高齢者・障害者の接遇・介助の現状

運輸省ではこれまで、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月)、「心身障害者・高齢者のための公共交通機関の車両構造に関するモデルデザイン」(平成2年3月)、「みんなが使いやすい空港旅客施設新整備指針(計画ガイドライン)」(平成6年8月改定)、「鉄道駅におけるエレベーターの整備指針」(平成5年8月)などを策定し、全ての人に安全、円滑かつ快適に利用できる公共交通機関の整備を推進してきた。しかし一方で、海上交通に関する整備指針については、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン」(平成6年3月)により旅客船ターミナルの整備指針が策定されているものの、船舶及び船舶・ターミナル間アプローチに関する整備指針は、未だ策定されていない状況であった。

かかる状況のもと、昨年度、高齢者や障害者等の移動制約者が安全、円滑かつ快適に利用できる海上交通の実現に向けてバリアフリーの整備方針に関して、特にハード面についての実態把握と今後の方向性についての研究を実施した。

調査の結果、海上交通施設においては海上特有の要因や船舶の構造上の要因により、バリアフリー施設整備が技術的に困難なケースや航路の利用状況等から勘案して人的対応が有効である場合など経済性の問題もあってバリアフリー施設の整備が難しいケースもあることがわかった。

このようなケースにおいては、海上交通事業者が独自に必要に応じて人的介助を実施する方法で対応しているのが現状である。しかし、高齢者や障害者の接遇方法についての教育を実施している海上事業者は少なく、接遇方法についてのマニュアルも整備されておらず、高齢者や障害者の介助の現場に居合わせた職員が個別対応しているケースが多いものと想定される。一方、バリアフリー法4条5項に職員に対する教育訓練の規定があることや、海上交通においては、ゆれ等の影響や海上交通特有の様々な制約要因もあり、陸上における交通モードとは異なった高齢者や障害者等の安全かつ快適な移動支援のための接遇方法等ソフト面での対応方策の検討が必要と思われる。

こうしたソフト面での対応方策に加えて、海上交通を利用する高齢者や障害者等に対して海上交通諸施設の案内や運航に関わる情報等の様々な情報を的確に提供していくことが、安全かつ円滑な移動支援につながると考えられる。

さらに、海上交通が陸上交通と異なる要因として、海上等における緊急避難の問題がある。緊急事態発生時に高齢者・障害者等を含む全ての人々を安全に避難させる方法についても今後重要な課題となってくる。

こうした状況のもと、海上交通施設のバリアフリー化の推進と平行して、高齢者や障害者等にとって利用しやすい海上交通機関の接遇方法の整備が求められている。

 

 

 

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