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i) グループ・ハイヤー

Group Hire Schemeは、CTAが所有する車両を、グループで借り上げて自分達の目的のために使用している例がある。例えばボーイスカウトが遠征する時にバスが必要である場合などが挙げられる。ドライバーは、ミニバス事業者やCT組織から派遣してもらうこともあるが、自前で調達するのが一般的である。また、スクールバスとして車両を借り上げ、先生が運転する例もある。マンチェスターの例では700〜800のグループがこのシステムを利用していると考えられる。

 

ii) コミュニティ・バス

イギリスのコミュニティ・トランスポートの枠組みにおけるコミュニティ・バスは、わが国の自治体等が助成して運行するようなバスシステムとは異なる。

国内におけるミニバス(9〜16人乗)はおよそ10万台程度あるとされ、うち8万台は非営利の組織によるものである。1台規模の組織から、ロンドンのカムデンタウンのCTのように30年近い歴史を持ち、100台規模の車両を有する組織まで存在する。

コミュニティ・バスは、一般のバスサービスと多くの共通点を持っている。すなわち、時刻表に従って、事前に決められた路線を運行し、乗客から運賃を徴収するということである。唯一異なる点は、ボランティアにより運行されているということである。一般的にはこうしたサービスの実施は地方政府により支援を受け、立上げ予算は政府機関から資金提供を得ている。とにかく、ボランタリーグループがコミュニティバスを運行する事により、既存の公共交通サービスが極めて不十分な地域に住む人々が、生活上欠く事のできない施設へのアクセスを可能にするなど、その役割の重要性は高い。

こうしたサービスが普及した背景には、人口の少ない郊外部において、人々が許容できる範囲の運賃で効率的な公共交通を提供することは、営利事業者、地方自治体等にとってかなり難しいためである。当然ながら、過疎地域では、バス会社が運行コストをカバーするだけの収益を上げることは困難である。地方議会でも適正価格でのサービスを保障するために奮闘している状況が多く見られるが、事態は改善されない。政府部局からの制限つき基金などが利用され、なんとか運行を続けているのが実態である。

こうした過疎地域におけるサービスの提供上の困難を、いくつかの地域ではボランティアセクターにより埋めている事例がでてきたり、コミュニティに依拠した(community-based)交通事業者(operator)が、サービスプロバイダーとして、過疎地域で利用可能な交通の提供に貢献している。いくつかの事業者は1985年交通法の22条に基づく補助金の助成を得たサービスである。この条項に基づくサービスは、一定の条件のもと、利益を上げることも可能である。

コミュニティバスは、他の公共交通機関に対する補完的な役割を持つものである。地方政府の交通調整担当(Transport Coordination Officer)により、民間、公共、ボランティアの各セクターによるサービスが競合しない様に配慮されている。これは、過疎地域における交通支援財政が極めて限られている場合には、比較的直接的な調整法である。

今後は、追加的な財政支援を目的とした政府の方針があり、過疎地域の交通の支援環境が確実に変化してきている。

 

 

 

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