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前政権のもとDDAができた当時は、交通の分野が法律に十分に位置づけられていなかった。市民権の中にアクセスが包含されると対応しきれないと考えられていたため、交通には触れなかった経緯があるのは事実である。最終的には交通が含まれることになった。今後は、市民権としてのアクセスを公共にも幅広くPRする必要が生じている。DDAの罰則については、Criminal Sanctionとして裁判で罰金を課されることもある。

DDAにおいて、公共交通のインフラに関する規定は、詳細なものは決められていない。この規定は、交通事業者に対して、必要と認められる場合、アクセシビリティに関する物理的なバリアを取り除くこと、もしくは何らかの代替手段により対応することを義務づけている。また、障害者を差別的な状況に至らしめている、政策や状況について改善を行うものである。1999年10月から、サービス提供者は、障害者がサービスを利用することが不可能になるような、状況や方針について改善の義務を負うことになる。また、物理的バリアについても代替手段での対応の義務が生じる。さらに2004年から、事業者は、理由なく障害者の利用を妨げている物理的なバリアについて、取り除く、または取り替える、または物理的バリアを避けられるような手段を提供する義務を負う。具体的には、建物に入るためのランプの設置などがそれにあたる。

政府は、「障害者の権利タスクフォース(特別推進本部)」を設置し、政府がどのようにして「障害者への包括的、実効的推奨事項を策定できるか」検討を進めている。1999年11月には各大臣に推奨事項を提出しなければならない。

1997年5月からのブレア新政府では、DDAの既存規定の見直しを意図しており、障害者の市民権を確立するために、さらにどのような方法が必要とされているかを検討することになっている。「特別推進本部」ではこれらの課題を検討し、各大臣に諮問する予定である。交通に関連した規定については、まだ具体的な提示が行われていない。こうした規定への対応は必須であるが、その時期については、交通モードごとに異なっている。

 

c. 地域レベルの交通政策

ロンドン地域交通法(London Regional Transport Act) (1984年) S2 (7):ロンドン地域の交通事業において、障害者のニーズに配慮することを規定したものである。

 

2] 分野ごとの個別的法規制

現在のイギリスにおける交通モードごとのアクセシブル化の対応については、概略表3-2-2-2のようになる。

ロンドンのタクシーに限ると、表中にも示したようにライセンスを得ている登録台数は19,000台あり、その登録車両については、車いすでも乗車できるようにスロープを装着した。しかし、地方のタクシーについては、ライセンスは地方自治体の管轄にあり、政府として規制することは難しい。また、個人事業者が多いことが、車両への投資をより困難にしている。

DDAは航空機、船舶へのアクセスは対象としていない。航空機についてはICAOの基準に合わせて国際基準に対応していくことになる。船舶に関しては、国際海事機構(IMO)の基準があるが、DPTACが2000年10月にも詳細な基準を提言する予定である。また、鉄道と道路に関しては表3-2-2-3に示した法律により、規制されている。

 

 

 

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