3. 障害を理解する
1] お客さまに対して尊厳をもって接すること
障害には様々な種類や程度があります。障害の種類とその主な特徴、公共交通機関を利用する上での困難な点などを理解することが欠かせません。こうした基本的な知識を得ることは、日常業務で適切な接遇・介助を行うときの心がまえを形成するうえで大切です。また、高齢の方など、複合的な障害を持つ方もおり、それらに対応するには、日常的に接する頻度の高い障害を中心に、基本的な特徴を関連付けて理解することが大切です。
接遇・介助の必要性はすでに1章で述べましたが、移動の円滑化、安全化、快適化という観点から、障害のある人の特徴やそのニーズを考えてみる必要があります。
接遇の大切な点は、まず障害のあるお客さまの様々なニーズに気がつくことです。そして、一般のお客さまとまったく変わることなく、理解と尊厳を持った態度で接することです。この心がまえが接遇の第一歩であり、この姿勢が欠けていては、お客さまの必要とする介助を提供することができません。
2] 移動のニーズはみな同じ
例えば、車いすのお客さまが酔った状態で階段昇降機の使用を申し出てきたらどうでしょうか。「障害者なのにお酒をのんで…」と思ったことはないでしょうか。また、夜遅くにお年寄りが何かを尋ねてきた時「こんな遅くに出歩かなければいいのに…」と思ったことはないでしょうか。こうした考え方は、障害のある人、高齢の人を自分たちとは異なる特別な人と考えているためではないでしょうか。お酒を飲んで楽しく過ごしたい、夜遅くに出かけなければならない用事がある、こうしたことは、どんな人にでも日常的にあることです。
移動に制約があっても、日常生活における移動のニーズは、ほかの人と同じようにあるものです。むしろ、公共交通機関を使った移動がまだまだ不便だから外出を控えている人が多く、障害のある人の中には、移動だけでなく日常生活における活動のニーズまでも制約されてしまっている人が多いことを理解する必要があります。