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同時に検出された信号はレーダー・パフォーマンス・モニタの動作のためのトリガ信号となる。機種によっては、レベル検出、保持回路では近隣の他船のレーダーからのパルス波で誤動作しないようにレーダー本体からの送信トリガを受けて、信号レベルの保持動作を行わせるものがある。レベル検出回路の測定結果が所定のレベルに達しているならば、機種によるが12マイルあるいは14マイルの距離にレーダー・パフォーマンス・モニタからの信号が現れるように遅延時間が設定される。遅延されたトリガ信号で周波数掃引信号電圧発生回路と振幅変調信号電圧発生回路を起動させる。発振周波数を掃引する理由は、船舶用レーダーに許可されている周波数帯のすべてのレーダーにも対応できるように周波数帯の全域を掃引するためである。

この周波数掃引信号電圧で、VCO (Voltage Controlled Oscillator:電圧制御周波数可変発振回路)は周波数帯の全域にわたって周波数を変えながら発振する。その出力は初期調整用の減衰器で所定の強度に工場出荷時に調整されている。この出力はさらにPIN1)減衰器で振幅変調される。

1):PINとは、Positive-Intrinsic-Negativeの頭文字をとったマイクロ波領域で動作できる極めて高速な半導体素子の名称である。その構造はP型半導体層とN型半導体層の中間に通常の半導体層を挟み込み、バイアス電圧でインピーダンスが変えられるようになっており、減衰器や移相器として応用されている。

遅延抑制回路からの遅延トリガで振幅変調信号電圧発生回路が起動されその制御電圧(バイアス電圧)によって3〜4dBずつ強度が減衰させたパルス列がPIN減衰器で作られている。その結果、何番目のパルス列まで観測できるかを見ることで、受信回路の感度の低下状況を判断できる。PIN減衰器を経たマイクロ波の出力は設置調整用の減衰器を経て、アンテナからレーダーのアンテナに向けて送信される。

設置調整時には所定の距離に表示されるように遅延時間の調整を行い、表示位置の調整を行わなければならない。その理由は発振器が周波数掃引している関係で、レーダーの受信帯域内に入るまでに若干の時間的なずれが生じるので調整を要するためである。

レーダー・パフォーマンス・モニタからの送信信号について説明する。

図5・14の(1)に示すように、レーダーからの送信パルスが受信されレーダー・パフォーマンス・モニタの受信部で送信レベルが測定される。

送信レベルが低下していなければ12マイルあるいは14マイルの距離に相当する所定の遅延時間の後に、(2)に示したように診断用の信号が送信される。このときレーダーからの送信レベルが低ければ、遅延時間を短くして(3)、(4)のように送信する。

 

 

 

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