3・7・2 レーダー用ブラウン管
レーダーの場合には電磁偏向のCRTが使用されることが多い。電磁偏向の場合は、CRTの管の外部に電磁コイル(偏向コイル)を巻き、それに適当な電流を流して、管の一部に磁界を作ってやると、マグネトロンのところで述べたフレミングの左手の法則によって電子ビームを曲げることができる。上下と左右への偏向には二組の偏向コイルが必要であるが、レーダーのPPI像を作るためには一組だけの偏向コイルを使って、そのコイルをレーダーの空中線の回転に同期して回転させ、コイルには、のこぎり波の電流を流すようにすれば、この一回の三角波電流によって、電子ビームは管面の中心から外周に向かって偏向し、同時にその偏向の向きは、コイルの回転とともに管面を一周するように変化して、所要のPPI像が作られる。
電子ビームが管面に当たっても、何も見えないので、そこには蛍光体が膜状に塗布してある。CRT面における輝点の明るさは、蛍光面に当たる電子流の単位面積当たりの電子の数が多く、かつ、その速度が速いほど明るくなる。この電子流を制御するには、カソードと第1グリッドの相対的な電位差を変えることによってできる。すなわち、第1グリッドの電位をカソードに対して負にするほど電子流は減少して輝度は暗くなり、逆に電位差を小さくするほど電子流は多くなって明るくなる。
電子の速度を変える場合には、一般に第2グリッドの正電位を変えることによって制御し、電圧が高くなるほど電子の走行速度は早くなって、輝度は明るくなる。したがって、第2グリッドに探知時間だけ正にゲート電圧を印加して速度を速め、さらに第1グリッドに受信信号が加わるようにしておくと、信号がきたときには第1グリッドとカソード間の電位差が小さくなり、蛍光面に適当な明るさの輝度が現れる。
3・7・3 カラーブラウン管
カラーブラウン管(カラーCRT)は、原色信号(赤・緑・青)によって制御された電子ビームを発射する三本の電子銃と、色選別を行うためのシャドウマスクと、赤・緑・青に発光する蛍光体を規則正しく塗り分けてある蛍光面とで構成されている。代表的な例を図3・13に示す。電子銃は図3・14、図3・15に示すように、三本の電子銃がデルタ形に配置されたものが多く使われている。シャドウマスクは、電子銃の配置と対応して、図3・13に示すような長方形か、あるいは3・14に示すような丸形の微細な小穴の設けられた薄い金属板で、蛍光面から約10mm離し、蛍光面と平行に取り付けられている。