日本財団 図書館


システムの各衛星は電子時計を搭載しており、利用者は4衛星からの電波(各衛星からの電波はすべて1575.42MHzと共通であるが、それぞれの衛星からの電波はその距離測定用の符号で区別できる。)を受信し、受信機でのデータ処理で受信位置の三次元(緯度・経度・高さ)の位置と時間と速度の測定ができる。船舶で二次元の位置の測定でよいときには、3衛星からの電波を受信すれば船位が計算される。このシステムは位置の測定に時間を必要としないので、毎秒一回の位置の測定と計算も可能である。すでに各種の受信機が入手可能で、初めにも述べたようにポケットに入るような小型で安価の受信機も出現している。GPSはGMDSSでは、インマルサットEGCの受信指定海域の位置センサ用や静止衛星利用EPIRBの位置情報附加用等に使用される。

 

8・3 インマルサット海事衛星通信システムの概要

海事衛星通信システムは、3つの大きな構成部分からなっている。それらはインマルサットによって供給される衛星部分、海岸地球局及び船舶地球局である。このシステムの中枢センターはインマルサットのロンドン本部に置かれている運用制御センター(the operation control centre:OCC)であり、24時間体制で常時システムの管理、通信活動の調整を行っている。

インマルサット衛星は、前述のように大西洋、インド洋と太平洋上空の赤道上で地表から約36000kmの高さの静止衛星軌道上にあり、ほぼ全世界的な有効通信範囲をもっている。

図8・1に示すように船舶(船舶地球局)から発信された1.6GHz帯の電波は衛星で受信され、4GHzの電波に変換して、これを海岸地球局に送信される。陸上からの信号は逆の経路をたどって海岸地球局から6GHz帯の電波として衛星に向けて送信され、衛星はこれを1.5GHz帯の電波に変換して船舶地球局に送信する。

衛星はこれら通信の中枢機能の役割を果たしている。現在のこれらの運用をしている衛星は、図7・15と表8・2に示す位置にあり、従来の衛星より3〜4倍のチャンネル容量を持つ第2世代の衛星であるが、予備衛星としてまだ従来の第1世代の衛星が残っている。これらの衛星及び第3世代の衛星を含めて、それらの諸元を表8・3に示す。第3世代の衛星は1]スポットビームの空中線をもつので、一部の海域で小さい利用者の空中線が使用できる2]大型で中継容量が大きくなる3]航法用の中継器をもっていて、GPSの業務の補充ができる4]衛星の故障の自己診断をして、それを利用者に警報できるものである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION