今回は、山梨県の峡西消防本部を取材した。
当本部は、八田村・白根町・芦安村・若草町・櫛形町・甲西町の六ケ町村で構成されている。本部は若草町にある。南アルプスの麓に位置し、自然環境豊かなところである。
この地域は、さくらんぼ・桃・すもも・ぶどう等の果樹生産が盛んだ。八田村は、日本三大扇状地である御勅使川扇状地に拓け、年間を通して果樹を生産している。白根町では、桃やさくらんぼの花が満開に咲く中、桃源郷マラソン大会が行われ、毎年全国から市民ランナーが集まってくる。
芦安村は、日本の山を代表する南アルプスを管内にしており、富士山の次に高い北岳(三一九二m)を主峰に、間の岳・農鳥岳の白根三山がそびえ、地蔵ケ岳・薬師岳・観音岳の鳳鳳三山など、日本を代表する大山岳地帯が広がっている。
若草町には、甲斐路の季語ともなっている十日市がある。毎年二月一〇日・一一日に開催。「十日市で売っていないものは、猫のたまごと馬の角」と言い習わされてきたたとえは、市に出揃う品数の豊富さを誇っている。櫛形町はアヤメが有名。隣りの増穂町にまたがる櫛形山では、初夏に一面に咲き乱れ、東洋一と言われている。
甲西町は、西部は果樹園に囲まれ、中央には工業団地が、また、東部では野菜を中心としたビニール栽培が盛んで「緑と産業と文化の町」をキャッチフレーズにしている。
消防本部は昭和四九年に組合消防として発足、平成七年に広域行政事務組合となり、現在一本部・二署・二分遣所、消防長以下七五名の消防職員と六消防団、七六七名が、管内二六四・〇一km2、住民約七万人の安全と安心を担っている。
★救急態勢の確保
峡西管内も年々救急出動件数の増加をみている。平成一〇年には、指令装置を更新し、地図検索による到着時間の短縮を図った。更に、救急救命士八名を二署に配置し万全を期している。職員の救急処置の技術向上はもとより、地域住民に対しての救命講習を積極的に行い、バイスタンダーの育成に効果をあげている。
また、平成一三年度には二台目の高規格救急車の増車計画があり、更なる救命率の向上を目指している。
★十日市での広報活動
毎年開催される峡西地方の名物、若草の十日市。この市は、消防本部前から東に約一kmにわたり露天商が軒を連ねるお祭りで、県内外から二〜三〇万人の客が訪れる。本部では、開設以来、この日にイベントを展開、火災予防を呼びかけている。ミニ消防車体験乗車、起震車体験、煙ハウス体験や防災器具の展示など。平成一三年は、レサシアン七体を使用しての蘇生法の指導、三角巾で応急処置の指導やロープワーク教室などを計画している。
★若手の気持ちを理解する消防長
現職から二人目の消防長である保坂消防長、過去には消防団員も経験している。
「階級社会の中、若手はコツコツと積み上げていくことが必要だ。仕事を覚え、自分自身も成長してほしい。人が少なく、分業・兼職となってしまうのが小規模消防の宿命だ。人員不足の中職員にも苦労をかけている。公務員として、生活態度・生き方など、地域住民の手本となって欲しい。『信頼に応える』という意味でも一般的生活態度を律して欲しい。阪神・淡路大震災の教訓を活かしたい。震災対策として、県庁に県内一〇消防本部の指令センターを入れ二元化することを要望している。また、消防・救急無線のデジタル化の推進など、国や県、各消防長、各本部と連絡を密にして効果的・効率的に消防行政を推進していく。」と語られた。
(佐伯英夫)