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消防職員のための法令解説

 

任意後見制度

 

一 任意後見制度

任意後見制度として、「任意後見契約に関する法律」が、平成一一年一二月八日に公布され、平成一二年四月一日から施行された。

 

二 任意後見契約

任意後見契約は、委任契約である。

本人(委任者)は、任意後見人(受任者)に対し、精神上の障害により、判断能力が不十分な状況における自己の生活や、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託する契約である。

そして、その委託に係る事務については、代理権を付与することができる。この契約は、家庭裁判所が、任意後見監督人を選任した時から、効力を生ずる(任意後見契約に関する法律以下「法」という。第一条、第二条)。

任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者は、任意後見受任者という。

 

三 公正証書の作成

任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によることを要する(法三条)。

 

四 任意後見契約の登記

任意後見契約は、嘱託又は申請によって、後見登記簿に登記される。

任意後見契約が、登記されている場合に、精神上の障害により、本人の判断能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を生じさせる(法四条)。

ただし、任意後見受任者に不適任な事由がある等の場合には、家庭裁判所は、任意後見監督人を選任しない(法四条一項ただし書)。

 

五 任意後見監督人の制限

任意後見受任者又は任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となれない(法五条)。

 

六 任意後見人の事務を行うに際しての配慮

任意後見人は、その事務を行うに当たり、本人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない(法六条)。

 

七 任意後見監督人の職務

任意後見監督人は、任意後見の事務を監督し、その事務に関して、家庭裁判所に定期的に報告する。そして、随時、任意後見人に対し、その事務の報告を求め、あるいは、任意後見人の事務や本人の財産の状況を調査すること等を職務とする(法七条)。

 

八 任意後見人の解任

任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、任意後見監督人、本人、その親族又は検察官の請求により、任意後見人を解任することができる(法八条)。

 

九 任意後見契約の解除

任意後見監督人が選任される前は、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面で、任意後見契約を解除できる。任意後見監督人選任後は、本人又は任意後見人は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、任意後見契約を解除できる(法九条二項)。

 

一〇 後見開始の審判

任意後見契約が登記されているときは、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があるとき後見開始の審判ができる(法一〇条)。

 

全国消防長会顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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