日本財団 図書館


このすばらしい演出効果に、事の重大さを知ってか知らずか、観客からはやんやの大喝采が沸き上がるが、主催者側は予想もしなかったこの出来事に驚き、丁度舞台の終演と重なったことを幸いに、何事もなかったように幕を降ろして、観客を急ぎ帰宅の案内に走る手際良さとは裏腹に、舞台裏では関係者等が舞台道具の代りに消火器、屋内消火栓を持ち汗だくの大奮闘中であった。

関係者の供述、現場見分調書の状況から、舞台の演出効果を狙って使用したフラッシュバルブと背景幕に吊り下げられていた木の葉に見立てた布が接触していたため、フラッシュバルブの発光熱により出火したことはその後の実験であきらかである。

 

おわりに

劇団関係者の話によると、これまで全国で多数の公演を同様の方法で行ってきたが、今回のようなことは初めてとのことである。

公演当初は、フラッシュバルブと出火に至った背景幕との距離も充分に考慮していたものが、いつのまにか馴れ合いから、距離等を確認することもなく、舞台のセットを行ったことから、偶然にも今回のような結果を招いたものと考えられる。

また、背景幕や暗幕については防炎物品を使用していたが、小道具については防炎物品ではなかった。

消防機関としても、幸いぼや火災で済んだから良かったものであるが、今回の火災において混乱を避けるためとはいえ関係者の誤った避難誘導の仕方、舞台の特殊装置の危険性等大いに反省させられ、更に防火管理等について指導を強化する方針である。

(柴山明)

 

救急・救助

コンクリート製遊具 児童挟まれ事故

四日市市消防本部(三重)

 

はじめに

当市は、三重県の北部に位置し、西は鈴鹿山系、東は伊勢湾に面した温暖な地域であり、沿岸部に石油化学コンビナート地域を有する工業都市である。

消防体制は、一本部・三消防署・三分署・一救急分駐所・一分遣所、消防職員二九二人、消防車両六五台、消防艇一隻により有事即応体制の確立を図っている。

ここで紹介する事例は、子供が公園内に設置された遊具から出られなくなった事故事例であります。

 

一 事故概要

・発生日時 平成一二年一〇月一日(日) 一七時四五分頃

・発生場所 四日市市坂部が丘二丁目坂部が丘二号公園(住宅街に設置された公園)

・覚知時間 一八時一九分

・現場到着時間 一八時二八分

・救助完了時間 一九時一三分

・要救助者の状況 一〇歳女児(小学五年生)(傷病名:クラッシュ・シンドローム 入院一日)

・出動車両等

中消防署 特別救助隊(救助工作車) 一台 四人

中消防署 救急隊(救急車) 一台 三人

(増強)中消防署 消防隊(ポンプ車) 一台 四人

 

二 事故発生状況

平成一二年一〇月一日(日)一七時四五分頃、公園で友人二人と遊んでいた女児(小学五年生)が、汽車の形をしたコンクリート製遊具の煙突部分に入り込み、女児の大腿部から腰部付近が煙突内部に挟まれ出られなくなったもの。

 

三 通報

女児が遊具から出られなくなった状況を、公園で遊んでいた他の児童が付近住民に知らせたところ男性二人が現場に駆けつけ、人力で女児を上方に引き抜こうとしたが救出することができなかったので一八時一九分に消防本部へ通報したものである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION