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湖西広域消防本部(滋賀県)

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当本部は、滋賀県の北西部にあり、管轄総面積は約五一〇平方キロメートルと県全体のおよそ八分の一を占める。東部は琵琶湖に、南西部は京都府に、北西部は福井県に接し、西側は比良山系が連なり、圏域の中央部には、およそ二三平方キロメートルの陸上自衛隊饗庭野(あえばの)演習場が広がり、ここを囲む高島郡五町一村(マキノ町、今津町、朽木村、安曇川町、高島町、新旭町)が昭和四五年に圏域設定を受け、同四七年四月に消防本部を発足させた。

現在では一本部二署二分遣所、九二名の職員と、六消防団一七分団、五四七名の団員が、人口約五万六千人余の防火・防災を担っている。

★厳しい自然環境のもとで

古来から京都や奈良の都と日本海側とを結ぶ交易の要衝として栄えてきた当地域は、管内の七三パーセントが山林地帯であり、日本海性の気候条件下にある。秋季は俗に「高島しぐれ」と呼ばれる時雨が山岳部一帯にしばしば発生し「弁当忘れても傘忘れるな」という言い伝えがあるほど厳しく、更に冬季の積雪は一メートルを超えるという。シーズンには、管内にある四つのスキー場は、京阪神等からの観光客で賑わう。それに伴い、路面凍結による自動車のスリップ事故も多発、救急・救助事案に至るものも、この時期になると数件あるということだが、意外な答えは「観光客との交流を積極的に推進していくための取り組みとして、町村間の役割分担や共同事業の展開、施設等のネットワーク化の推進に、当消防本部もその一翼を担うのは当然のことです。」と、取材に応じて頂いた担当の方の言葉に「湖西広域連合は一体」という広い視点にある本部の認識が浸透しているのを感じた。

★陸上自衛隊との連携

地域防災に目を向けると、昨年はとりわけ全国各地で地震や火山噴火が後を絶たない年でもあったが、当本部でも「この次はあるのか」と様々な憶測が飛び交ったそうである。というのも地質専門学者の話によれば現在、琵琶湖西岸を走る活断層の動きが予断を許さない状況とのことである。本部としては、絶対風化させてはならないあの阪神・淡路大震災で得た教訓を「このことは決してよそ事ではない」という意識のもと、この憂慮せざるを得ない状況下にある今こそ、常備消防として、如何なる事象に遭遇しようとも常に盤石の体制で臨まなければならない責務があることを再認識していなければいけないとのお話であった。

そのため、防災関係機関との連携を図る中で、大規模災害ともなれば、地域の消防関係者はもとより、災害現場等で最も精通した陸上自衛隊の支援も欠かせないことから、地元饗庭野駐屯地との防災に関わる種々の訓練等を通じ協力体制を密にしながら、「地域住民の期待と信頼に応えられる湖西広域消防本部でありたい」との強い決意を伺った。

★安全・確実・迅速

寺田消防長は、昨今の消防を取り巻く環境は、目を見張るものがあり、常に地域の防災機能を守るための常備消防として防災対策を積極的に推進していくほか、日々の複雑多様化しつつある各種災害等に対しても、安全・確実・迅速をモットーに的確に対処していかなければならないと語られた。

そこで、こうした時代認識に立ち、移り変わる社会情勢の変化に柔軟かつ敏速に対応すると共に、組織を支える消防職員一人ひとりが引き続き自己の英知と創意工夫を凝らしながら、それぞれの力を結集できる環境づくりと、更には積極果敢に対処できるための組織体制や職員の意識改革にいっそう微力を注ぎたいと結ばれた。

(河原公一)

 

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