日本財団 図書館


海外消防情報

Overseas Fire Information

 

EUの防災計画

最近EU加盟諸国に地震等の大災害が発生しているために、EUは民間防衛(シビル・プロテクション)消防及び消防局の体制と災害出動隊の強化を計画している。

特に、一九九九年の秋以来、ギリシャやトルコの地震、ヨーロッパ北部、フランス、ドイツ及びオーストリアの暴風雨、フランスのブリッタニ精油所のオイル漏洩事故、ダニューブ川の汚染、エンシェデ花火工場の爆発火災等EUとその周辺諸国で多数の大規模な災害が発生している。

EU環境委員会のマーゴ・ワルストレーム委員長によると、「ヨーロッパの市民は、彼等の心配事を反映する問題に対してEUが具体的な活動をすることを期待している。EU諸国は、協力関係を強化することによって、一国では対処できないような災害が発生した場合に相互及びEU外の国々をより効果的に支援することができる。」という。

また、地域政策委員会のミシェル・バーニエ委員長は、「ヨーロッパ出動体制をより体系的に充実させることが必要であると確信している。それには、各国が現在所有する防災機器を活用して、協調的に全ての大災害に出動することである。」と述べている。

このような防災体制は、ロマノ・プロディ・ヨーロッパ委員長がヨーロッパ議会に委員会の防災計画を発表した時に、環境災害に対するヨーロッパの行動及びヨーロッパ・レベルにおける民間防衛・防災体制の確立を要請して実現した。

この新しい計画は、ヨーロッパ委員会が大規模な海水汚染を含む自然災害、環境災害及び技術的災害が発生した際に、より強固な協調性により出動するために速やかに取るべき手段を検討することを目的としている。最初の段階は、すでに各種の形態で組織されているか、組織することのできるEU会員各国の民間防衛出動隊の現状を把握することである。

また、ヨーロッパ委員会は、EU会員国及びそれ以外の国々で災害が発生した場合に、合同して出動するこれら出動隊の協力的活動力を高揚させるための計画を提案する予定である。さらに、合同災害出動訓練、合同演習及び各国出動隊員の配置替えについても提案する予定である。

災害の通報については、一九九一年にEU内を統一して一一二番とすることが決定されている。各国では、消防独自の外に、消防、警察又は中間組織の指令センターが全ての緊急要請を受信して関係機関に廻しているが、一五の言語と約二、五〇〇の方言、各種サービスの質的内容、文化的背景の相違等もあるので、一一二番緊急要請は各国に最も適した方法で受信することができるとしている。

通訳の仲介や心理的面における新しい技術が開発されている国々もあるが、これらの分野における各指令室員の教養が不可欠となっている。

(文責 大野春雄)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION