三 基本的操作要領
操作は極めて簡単で伝送に要する時間は、標準モードで一七秒である。
(1) デジタルカメラで撮影する
(2) 消防側の携帯電話と医療機関の携帯電話を結ぶ
(3) 接続した携帯電話を介してデジタルカメラの映像を本体の送信ボタンのワンタッチで伝送する
四 特長
本体は、静止画像送・受信装置と画像モニタ用の液晶表示器をキャリングケースに組込んで一体化し、三種類の電源に対応できるものである。
従って、救急車内での傷病者状況の撮影・画像伝送はもとより、肩掛け携帯式で堅牢な造りのため、容易に車外へ持ち出して使用することができ、機動性に優れている。
一方、医療機関においても装置を固定することなく、あらゆる場所で受信(送信)が可能なため、指示医師はスムーズな対応ができる。
また、本体は、災害対策用カメラ装置(ボーカメ)のコントローラも内蔵しており、集音マイク付き専用CCDカメラを接続することにより、災害・事故時の要救助者の探索用としての利用も可能である。
なお、今回、画像伝送システムにデジタル携帯電話を用いているが、一般のNTT加入電話や衛星電話でも対応可能で、通信回線の寸断あるいは不通が生じ易い非常災害の際にも、極めて有効な情報伝送手段に成り得る。
五 運用
運用は、救急処置を最優先し、プライバシー保護に努めながら次に掲げる事象の画像を伝送又は記録する。
(1) 中高層建築物で発生した重度傷病者の生体情報(モニター上の心電図等)
(2) 外傷・熱傷等の外因性疾患傷病者の状況
(3) ドクターカー要請のために必要な状況
(4) 損傷部位推定に必要な交通事故、墜落転落等の状況
(5) 大規模事故・多数傷病者発生事故状況
(6) その他救急隊長が必要と判断したもの
六 効果と課題
顕著な効果は、医師が傷病者の状態や救急現場の状況を把握しやすく、救急隊員に対し指示、指導がスムーズに行うことができることや緊急性の高い傷病者の受入れ準備あるいは病院所有のドクターカーの出場が迅速に対応できることである。また見逃せない収穫としては、病院前救護は救急隊員と医療関係者が共同で行うという意識が相互に、一層強くなったことである。
課題は、月一〜二回程度のシステム使用を増やすため、平日昼間の利用を拡大する必要がある。機器開発に当たっては、三菱エンジニアリング(株)等の全面的な協力により実現したものである。しかし、軽量化など改良の余地もあるが、消防予算の支出や更なる企業協力を得ることが難しい。
他方、ヘリコプターによる傷病者搬送訓練時に本システムの活用を試みようとしたが、電波法の規制により媒体である携帯電話の使用が認められず、未実施に終わった経緯がある。今後、救急業務はヘリコプターの活用を視野に入れていかなければならない時期にあり、是非とも規制緩和を望みたいものである。
おわりに
早晩、救急救命士の行う処置範囲の拡大は必ず訪れる。その大前提であるメディカルコントロール体制の確立には、救急救命士が医師の効果的な支援や助言を得るために足りる情報の提供は不可欠である。今般導入した画像伝送システムは、これに打って付けのものであると確信している。