それでは上手な聞き方のポイントを述べてみましょう。
1] 目で聞く→相手の目を中心に顔を見て聞く
2] 耳で聞く→内容真意を言葉と語調で聞く
3] 口で聞く→あいづちを打ち質問し確認をとって聞く
4] 背で聞く→背筋を伸し、よい姿勢で聞く
5] 心で聞く→集中し、傾聴する
(2) 具体的な方法と結果をしめせ(第二原則)
人間は明確に方法論(やり方)とメリット(効用)をしめされると意欲や欲望をかりたてられます。
身近な例ですが、皆さんがデパートの食堂に入る時を考えてみてください。
おいしそうなサンプルと値段を表示したプレートを見て食べ物、飲み物を選んでいると思います。「千円出せばあの天丼が食べられる」「千五百円出せば上てんぷら定食が食べられる」と考えて品選びをしているのでしょう。
このように私たちが物を選んだり、行動を起そうとする時は、具体的にこうやれば、これだけの効用が生まれると考えるのです。
このことから考えられることは、相手に交渉する時も
「具体的にやり方、方法を提示し、その結果としての効果効用を提示する」ことが大切といえましょう。
(3) 自発意思を起させよ(第三原則)
人間は他人から押しつけられることを嫌います。「こうやるべきだ」「こうやりなさい」と一方的にきめつけられると反発感情がめばえてきます。
このことは趣味の世界でも仕事でも同じことがいえます。
趣味で何かをやる時の楽しみは自らがすすんでやるから楽しく、もし、押しつけられたり、強制されるといや気がさします。
このことから言えることは頭ごなしに「こうしなさい」「これが絶対である」と高圧的に断定することをひかえ
「私はこう考えている。君はどのように考えるか」依頼願望同意をもとめる言い方がベターです。
(4) 名誉を与えよ(第四原則)
前述しましたが、人間は使命感、誇り、自尊心をもっています。また存在価値を認められたいという心をもっています。
古い諺に「士は己の価値を知るもののために死す」とあります。
まさに人格を認めてもらい、行為を肯定してもらう時に心を満し全面協力したくなります。
「あなたの力が必要である」
「皆さんの、ご協力なければこの運動はなり立ちません」
「ご協力、心から感謝いたします」
という心から相手を肯定し、名誉を重んじる表現は、どんなにすばらしい音楽よりも、相手に訴える力があるといわれます。
特に用いて効果のある言葉としては
感謝の「ありがとう」
ねぎらいの「おつかれさま」
謝罪の「すみません」
という言葉を必要に応じて用いると効果があがります。
まとめ
以上、交渉力の基本と対応法について述べてみました。
ただ、交渉といっても前書きで述べましたように、さまざまな場面があります。しかし、どのような場面でも応用できる原理原則と方法論を述べたつもりです。
実務においては例外もあるでしょうが、
「これは大切だ」
「このことは必要だ」
と思う項目は是非、おぼえていただき、実践に移してみてくださることを期待いたします。
経歴
昭和七年 長野県生まれ
昭和三十年 慶應義塾大学経済学部卒
同年 養命酒製造(株)入社。
昭和三十九年 (現)社団法人言論科学振興協会入所
昭和五十二年 対話総合センター設立。現在に至る。
執筆者の清水省三先生は、平成一三年一月一二日、ご逝去されました。ここに謹んでお悔やみ申し上げます。(編集部)
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