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それでは把握するためにはどうしたらよいか。

まず第一に「事実」をつかみ事柄を十分に自分のものにしておくことです。

実際のやり方としては、その現場に行って「事実」を確認しておくこと。データがあればデータを分析しておく。専門家の意見を参考にしておく。などの方法で事柄をつかんでおくことです。

そして、その事実にのっとって「必要性」「重要性」「社会性」「効用性」を自分の考えとして把握し、交渉にのぞむことをおすすめします。

(3) 相手の分析と洞察

あたりまえのことですが交渉には必ず相手がおります。この相手は、それぞれに思いや考え、ものの見方があり、価値観が異なっています。

例えば、こちらはそれほど大切に思っていないことでも相手は非常に大切に思い考えていることがあります。

こちらは何んの支障もないことでも相手にとっては重大な損害をあたえられていると考えていることもあります。また、場合によっては、その逆もあります。

このことを十人十色とも人間千差万別ともいいますが、まさに、人はそれぞれの個性があり、特徴があるのです。

以上のことから考えてみると交渉時には自分本位の考えではなく相手の個性、特徴、ものの見方、その時の気分を考えて話す必要があるのです。

では分析の方法を述べてみます。

1] 相手の特徴を分析するには

(イ) 相手の求めているものは何か。

(ロ) 何を必要としているか。

(ハ) 相手の年齢、性別はどうか。

(ニ) どのような立場で意見をもっているか。

(ホ) どのようなタイプであるか。

(ヘ) どのような性格の持ち主であるか。

などを分析してみてください。

2] 相手の気分、心理状態を洞察する

同一人物でも、その場、その時において人間の心理状態は変ります。

また気分のいい時と悪い時があります。

喜怒哀楽といって、喜んでいる時、怒っている時、悲しい時、楽しい時があります。

そこで、交渉にあたっては、相手の心理状態を考え、相手が「喜」「楽」の時を選び、交渉にのぞむよう心がけてください。

(4) 日頃から人間関係をよくしておく

交渉ごとは、理論や理屈だけではなく、感情の面が大きく支配するといわれます。

例えば好きな人にものをたのまれれば、無碍(むげ)に断ることもできないでしょうが日頃から嫌いな人にものをたのまれれば、気分よく応じないでしょう。

そこで交渉にあたっては交渉時のみではなく日頃から人間関係をつくる努力をすることなのです。

具体的方法としては、まわりの人にあいさつを励行することも大切でしょう。

積極的に自治体の打ち合せや会合に出席し親しく会話をとりかわすことも有効な手段になります。

また、問い合せ、相談にも気楽に乗ってやることもよい人間関係をつくる手段になるでしょう。

 

2 交渉における具体的対応法

(1) しゃべるな、しゃべらせよ(第一原則)

コミュニケーション(伝達)の基本は聞くことにあります。

「聞いて話す」

このことを忘れると対話になりません。

まず、対話は相手の意見や考えを「聞いて」から「話す」のです。

相手の話をよく聞けば

「何を考えているのか」

「何をしてもらいたいのか」

「反発、反論する理由は何んなのか」

「何が原因で納得しないのか」

がわかります。

そして、相手の話を十分に聞いた上で、こちらの言い分や交渉する事柄を述べることです。

特に相手が反発反論し、クレームに発展する交渉においては、十二分に相手の話に耳を傾けてください。

以上の努力と方法が相手を納得させる第一原則です。

 

 

 

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