2] 情の座の充実(右脳の充実)
人にはそれぞれの事情があります。
かつて大きな交渉をなしとげた弁護士の中坊公平さんは、いかなる交渉も建前(理屈)だけではなく相手の立場を考えて交渉をしたといわれます。
情に流されてはいけません。しかし、相手が「何故そう主張するのか」「その背景はどうであるか」を考えて交渉にのぞむことでしょう。
3] 意の座の充実(前頭葉の充実)
人間は前頭葉といって額(ひたい)のあたりに信念、意欲、使命感、夢などを司る意志の座をもっているといわれます。
この座の充実こそ、むずかしい交渉を成功に導く基礎です。
危険な場所へ人命を救うためにとび込むのもこの心が働くからでしょう。どうしてもこのことをやってもらいたいという交渉ができるのも信念と意欲をかりたて自分がやるべきことであると使命感に燃えるからできるのです。
そのためにも、自分の仕事に誇りをもち、言うべきことの意義を考え、目的意識をもって交渉にのぞむことです。
(2) 言動(外言)の強化
次が言動の強化です。
人は、その人の態度を見て声や言葉を聞いてその人の人間性やものの見方を理解しています。
そこで外に表われる言動の強化法を述べてみます。
1] よい態度を身につける
交渉ごとは交渉初期の態度によって成功不成功がきまるといわれます。
そのためには第一印象で「なまい気なやつ」「おうへいなやつ」「ひくつなやつ」と言われないことです。
一旦、態度でいやな感じを与えるとその印象は容易にぬぐいさることはできません。
そこで交渉初期においては謙虚で誠実、親しみのある態度でのぞんでください。
具体的には背筋を伸し、相手の顔を見て、おちついた態度でのぞむよう心がけることです。
2] 声、言葉について
クレームの交渉で気持ちのこもらない、あいまいな声や言葉で応対されると、ますます腹が立つことがあります。
声と言葉は私たちの意思や情報や感情を伝える大切な手段であり道具です。
口の開閉に気をつけ誠意ある相手の気持ちをあたためる声、わかりやすい明瞭な言葉で話すようにしてください。
なお、交渉は相手の人格を認めることにありますから相手を大切にする敬意表現も忘れないようにすることです。
交渉において相手を納得させる対応法
1 基本条件
(1) 誠意と熱意
古いと言われるでしょうが、交渉ごとにおける基本は誠意と熱意です。
「あの人は誠心誠意話にのってくれる」
「彼の言っていることには嘘はない」
「本気で精一杯つくしてくれる」
という印象と内容が相手の心を打つのです。
特に相手が容易に説得に応じてくれない交渉においては、ここで述べている誠意と熱意をもってのぞむことです。
具体的には前にも述べた、態度、声、言葉の基本にのっとって交渉すること。そして内容としては軽はずみで、口から出まかせのことを言わないで、言葉と行動の一致をはかることです。
(2) 事柄の十分な把握
交渉にあたっては、交渉する事柄を十分に把握し理解しておくことです。
知らないことを言うと結果として嘘になります。わからないことを言うと、話のつじつまが合わなくなります。
そうならないためには、十二分にそのことを把握しておいてください。