交渉力向上の基本と対応法
対話総合センター所長 清水省三
最近の我が国の特徴の一つに個の尊重と価値観の多様化があげられています。
その特徴は交渉時においても現われ、如何にして相手の人権を守り、一方的高圧的ではなく「納得」させるかが鍵といわれます。
そのためには業務上の指示命令や緊急事態の対応はそのかぎりではありませんが一般の交渉ごとにおいては、相手を納得させる能力が必要不可欠といえるのです。
このことは皆さんも新聞などのマスコミの報道で感じられていることでしょうが行政の市民対応においても、そのむずかしさが話題にのぼっているのです。
このような時代背景の中で私たちが個人として、公的な立場の一員として相手を納得させる交渉力を身につける必要性があると考えます。
交渉力を身につける基礎について
交渉にはさまざまな場面があります。
例えば相手もその気になっていることをやってもらう交渉もあります。法律で定められたことを守らない人に守らせる交渉もあります。また、こちらは正しいと思っていることであるが相手も正しいと思っていることを翻意理解させる交渉もあります。
ケースによっては、テコでも動かないと考えている人を説き伏せ、こちらの思いを理解納得行動にかりたてる交渉もあります。相手に多大な迷惑をかけた時の謝罪、クレーム発生時の交渉もあります。
以上、それ以外にもさまざまなケースがありますが、どのようなケースでも、これだけは、はずしてはいけないという基礎原則があります。そこではじめに、その基礎原則について述べることにします。
1 交渉は内面の充実(内言)と言動(外言)によってきまる。
―脳力の充実と言動の強化
(1) 内面(内言)の充実
「心が決まると形が整う」といいます。また「脳力が高まると能力が高まる」といわれています。表象といって心の中の思いや考えや願いが定まれば表現の力が高まります。
このような論理にのっとって、はじめに交渉力を高めるための心の充実、脳力の開発の方法について述べてみます。
1] 知の座の充実(左脳の充実)
ものを依頼したり、説得をこころみる場合はじめに考えておきたいことが「その事を知る」ことです。
知らない事は話せないのです。
このあたりまえのことが非常に大切といえるのです。「事実をよく知っておく」「何故何を交渉依頼するのか」「必要なのか」ということを熟知していれば話す時の態度は定まります。言いたいことも明確に言い切ることも出来るでしょうし説得力も高まります。
そこで交渉にあたっては事前に交渉する事を調べ知識として自分のものにしておいてください。