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日高西部消防組合消防本部(北海道)

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千歳空港から列車を乗り継ぎ、約二時間程で消防本部の在る門別町の富川駅に到着する。

日高西部消防組合消防本部は北海道の中央南西部に位置し、日高山脈を源流とする沙流川流域の門別町、平取町、日高町の三町で構成されている。

このあたり一帯は競走馬の生産地として有名で、門別競馬場や多くの牧場などが在り、特に沙流川下流域の太平洋に面した門別町は、軽種馬生産全国一の飼養頭数を誇る馬産地として広く知られ、スペシャルウィークやシンボリルドルフなど、競馬史に残る多くの名馬を産出している。又、三箇所在る漁港からは豊富な海の幸が水揚げされ、門別沿岸で獲れるシシャモは特に有名である。沙流川中流域にある平取町には日本一の面積を誇る野生のスズラン群生地が在り、シーズンには大勢の人が観賞会に訪れる。沙流川上流域の日高町は日高山脈のふところにある高原の町で、その地形を活かしたスキー場は冬になると多くのスキーヤーで賑わいをみせている。

当消防本部の発足は昭和四八年四月で、現在一本部一署二支署三分遣所、消防職員七七名と三消防団九分団、二八五名の消防団員とともに管内面積一、七三六km2、人口二二、五九六人の安全で安心して暮らせる地域づくりに努めている。

◇消防団との連携

当本部管内の消防団はそれぞれに古い歴史と伝統をもっており、管内三消防団のうち二消防団が日本消防協会特別表彰「まとい」を受賞している。団員の郷土を守る志気、使命感は旺盛で全道ポンプ操法大会に出場し、優秀な成績を残すなど住民からの信頼も厚い。

管内が広大であるため、現場到着まで時間が掛かることから、火災現場における消防団との協力は不可欠となっている。合同訓練はもとより、年一回の技能訓練大会を実施するなど、常日頃から消防団との連携を図っている。

◇一日消防官・一日消防署長

毎年秋の火災予防運動期間中には、平取管内の男子高校生一五名位を対象に一日消防官体験を実施している。これは卒業後に家庭や会社で火災予防などに役立ててもらおうと行われているもので、辞令交付後に消防の歴史、組織、礼式、火災予防についての講話に始まり応急救護訓練及び煙体験、空気呼吸器を着用しての放水訓練を行っている。又、門別。日高管内では町会の方々に一日消防署長を委嘱し、火災予防を呼びかけるなど防災意識の高揚を図っている。

◇応急救護の普及啓発

当本部管内も高齢化社会を迎え、救急出場件数が増加している。一一九番受信から現場到着までの時間をいかにカバーするかは大きな問題であり、通信員が通報者に対し適切な応急処置法を指示するなどの対応を行っている。さらに各町のイベント時には応急救護の体験コーナーを設けるなど、自治会、会社、学校を通じて積極的に応急救護の普及啓発に努め、バイスタンダーの育成に成果をあげている。

また、平成一〇年には高規格救急隊の運用が開始され、当初二名だった救命士も、平成一二年からは三名体制となり、更なる活躍が期待されているところである。

◇三つのわ

門別町役場から着任され五年目という藤谷消防長は、「最初の頃は敬礼するのも照れました。」と笑顔で当時を振り返えられた。

消防を知れば知るほど責任の重大さを実感されたということで、「限りある予算と人員の中で、町民の奉仕者として地域住民に密着した消防行政が大切であり、職員は人との話、和、輪(三つのわ)をもって日頃から住民との信頼関係を築くことを心掛けて欲しい。健康管理にも十分留意し、普段は家庭を大切にして有事には全力で対応して欲しい。」と結ばれた。

(小林正弘)

 

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